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Final Cutと映画『Midnight Animal』について色々

このページにはHotline Miamiシリーズのネタバレが含まれています。

 Hotline Miami 2の劇中劇『Midnight Animal』について、好き勝手に言いたい放題するページです。妄想が多いのでご了承ください。

  1. 映画『Midnight Animal』製作スタッフ
  2. 映画『Midnight Animal』から見るJacket像
  3. 幻の台本とMartinの死
  4. プレイヤーが操作するMartinが演ずるThe Pig Butcher
  5. 映画『Midnight Animal』は実在するのか
  6. 映画『Midnight Animal』お蔵入り説

映画『Midnight Animal』製作スタッフ

 ゲーム開始直後、プレイヤーはチュートリアルとして、映画『Midnight Animal』の1シーンをプレイすることになります。Chapter選択画面ではChapter番号の代わりに『Pilot』と表示されてるので、実際、あのシーンが映画のパイロットフィルムだったのかもしれません。

 このチュートリアル中、ゲームの操作方法とは別に映画のスタッフ情報がぱらぱら表示されてるので、書き出してみました。

[2-Prologue: Midnight Animal]
Galaxy Film presents & film by Rouven Blankenfeld
Starring RACHAEL WARD
DAVID BRADSHOW
ROGER STEPHEN
VERNON WELLS
And MARTIN BROWN as The Pig Butcher
Director of Photography DAVID CONNELL
Music by SEAN EVANS
Sccreenplay ROUVEN BLANKENFELD
Exective Producer UWE KAMITZ

 提供はGalaxy Filmという会社みたいです。カット後に出てくるオレンジ帽子の人がRouven監督ですね。また、演者の中ではRachaelが唯一女性の名前なので、おそらくThe Girl役の女優はRachaelです。

 ブタマスクのMartin Brownも、名前自体はチュートリアルから出てました。[2-4: Final Cut]イントロのインタビューによると、Martinは他に『Blue Ocean』『The Calm』『Land of Trees』などの映画に出演してたけれど、『Midnight Animal』はそれらとは全く毛色が異なる映画だそうです。

映画『Midnight Animal』から見るJacket像

インタビュアー
インタビュアー

 [2-4: Final Cut]イントロにて、『Midnight Animal』の主演俳優Martin Brownがインタビューを受けてます。Richardが「This 'movie' you're making... you know how it ends?」と言ってることから、この時点で『Midnight Animal』は、まだ撮影が終わっていないであろうことが読み取れます。

 映画『Midnight Animal』は、1のJacket事件の映画化という扱いの劇中劇ですが、主人公はブタマスクをかぶったデブ男でした。さらに主人公はThe Girl (役) を付け狙って乱暴したり、妄想の電話の声を聴いて暴力行為をはたらくなど、史実と比べていかにもホラー・スプラッター的な改変をされてます。

 しかしJacketが自分の事件の新聞記事をスクラップしていた一面や、トイレが無い家の間取りはしっかり再現されてました。なので、少なからず取材や調査を行った上で制作されてはいたと思われます。

押収されたブタマスク
押収されたブタマスク

 Jacketがブタのマスクを持ってたことは、[2-5: First Trial]の裁判所で並べられてる証拠品にもブタマスクがあるので、恐らく周知の事実です。

 ブタマスク (Aubrey) は[1-2: Overdose]のハイスコアでアンロックされるマスクなので、ハイスコアで入手できるマスクは、逮捕時点でJacketが全て所持していたと考えていいんでしょうか。

 ただしレベル中で拾えるマスクについては、[2-15: Withdrawal]クリア後のデモでEvanが調べていたJakeの遺留品にコブラマスクが残っていたことから、所持しているとは限らないようです。まあ、Biker編でしか拾えないタコマスクとかもありますから、そうかもしれないです。

「お前は狂ってる」
「お前は狂ってる」

 マスクの出処はともかく、私はこの映画から、2の時代におけるJacketに対する世間の目の一角が伺える気がしました。

 [2-2: Homicide]イントロの新聞によると、Jacketは審問では一切発言してません。弁護士には[2-5: First Trial]イントロの裁判の通り「電話のメッセージでロシアンマフィアに脅されて犯罪を行った」と主張していたようですが、いかんせんそれでロシアンマフィアを殺しまくってたので、事情を知らない人から見れば完全に意味不明なはずです。

 裁判所の前で抗議活動をしてた人たち (あの中にAshとAlexがいます) のように、反ロシア派の市民の一部からはヒーロー視されていたかもしれないJacketですが、それ以外の人たちからはただただサイコ野郎扱いされていたから、このような映画が作られたのかもしれません。

荒れ果てたJacketの家
荒れ果てたJacketの家

 というところでふと気づいたのですが、[1-13: Assault]イントロのJacketの家は、何者かに荒らされてグチャグチャになってました。

 50 Blessingのマークが描いてあるので、JonatanかDennis、またはRichterが帰り際にやったのかもしれません。現場は警察のテープで封鎖されていたので、逮捕される前に荒らされてるはずです。だとしたら報道されたJacketの部屋は、荒れ果てているわ冷蔵庫に血の付いたものが入っているわで悲惨な状態だったことになります。

 でも、なんで彼らはJacketの部屋を荒らしたんでしょうか?

 一番邪悪な想像をすると、これは50 BlessingsがJacketをキチガイに仕立て上げようとして行った工作だった可能性があります。綺麗だった二人分のベッドが剥がされてるのも、誘拐されたはずの女性とJacketの関係が良好だった事実を隠匿しようとしたのかも。

 50 BlessingsはJacketの家の留守電テープを抜いて証拠隠滅してますが、実際のところ通話記録は残ってました。だからJacketが証言する『怪電話』を警察が信じて、本気で捜査されてたら、足がついてたんじゃないかと思うんです。だから50 Blessingsには、そのような邪悪な工作をする利点があります。

 すると実際、報道されたメチャクチャな部屋や証言のイメージからこの映画が作られたのだとしたら、制作側はそんなに脚色したとすら思ってないかもしれません。なんか悲しいぞ。

幻の台本とMartinの死

 撮影中のJacketの家のセットのテーブルの上に、なぜか映画『Midnight Animal』の台本が置いてあります。調べると一部を読むことができます。

[2-4: Final Cut]テーブルの上の台本
The girl screams as the Pig Butcher enters the interrogation room.
The Police next to her falls of his chair hitting his head.
She tries to get away, but the Pig Butcher catches hold of her arm.
He forces her down to the ground.
She screams as he...

「警官は椅子から転げ落ちて頭を打つ。彼女は逃げようとするが、The Pig Butcherが彼女の腕を掴み、床に押し倒す。彼女が悲鳴を上げ……」

Rを押しても……
Rを押しても……

 実際には、彼女の動きが全然台本通りではありませんでした。Martinが扮するThe Pig Butcherは、取調室に入った直後、The Girlに撃ち殺されてしまいました。Richardが言ってた「最後のどんでん返し」というのは、これのことなんでしょうか。

 でもカット後の監督と女優の反応が、あまりにもしれっとした雰囲気なのが気になります。もしかしてこの台本は実在せず、役に憑りつかれたMartinが見た幻なのか? それとも、リアリティを重視してたRouven監督が、主演俳優にすら内緒で別々の台本を渡してたとか?

 なんにせよ、ハチの巣にされたMartinは起き上がりませんでした。ハードモード開始時に流れる意味深なデモが各人の死の状況を再現してるとすれば、あの地獄の集会でここと同じ死体姿になったMartinは、この時死んでしまっていたことになります。

 そうだとしたら、セットにまさか実弾が入っていたとか? いや、実際には心臓発作とか別の死因かもしれません。でも、仮に監督が本当に複数の台本を用意していて、Martinが見た台本が実在したとしたら? 誤ってそちらに合わせて小道具が用意されてしまい、撃たないはずの銃に実弾が入っていたなんて事故が起きた可能性も……。

 妄想はともかく、イントロでこの結末について言及してると思われるRichardの不穏なセリフは次の通りです。

[2-4: Final Cut]イントロ
Richard:
I believe there's a pretty big twist at the end.
I doubt you'll like it.
In fact, I don't think anyone will. ...
Maybe you ought to get out before it's too late?

 Richardが映画の結末について、「誰も気に入ると思わない」「手遅れになる前にどうにかした方がいい」と言ってます。

 しかし死神野郎のRichardのことだから、単なる『The Pig ButcherがThe Girlに撃ち殺されて終わり』という結末に対して言ってるのではないような気がします。Richardは、このまま撮影を続けてたら遅かれ早かれMartinが死ぬ、あるいはすでに手遅れであることを知ってたような気がします。

 と、Martinが死んだ前提でいろいろ書きましたが、実際にMartinが死んだと言える根拠はハードモードのイントロで死んでいたという点だけです。他には、あれで死んでなかったらこのゲームに出てきた意味が無い気がするとか、Richardに向かって「夢なんだろ?」と聞いた点で逆フラグが立ってるとか、そんな程度のものしかありません。でも私はMartinが死んでてほしいので、以後はMartinが死んでる前提で書きます。ご了承ください。

 ちなみにMartinが本当に死んでるとしたら、エンディングのテレビの内容はMartinのインタビューが流れないものが正史の可能性が高いです。追悼番組でもない限り。

プレイヤーが操作するMartinが演ずるThe Pig Butcher

 筆者の考えでは、[2-4: Final Cut]イントロのインタビューは、「アパートの場面を撮影中のMartinが寝床で見ていた夢」です。

 理由としては、[2-4: Final Cut]のイントロが夢確定の[2-23: Caught]のイントロと同じ砂嵐で始まってるのと、何よりRichardが「目を覚ます時間だろ?」と言ってるからです。

 なので逆に、アパートで目を覚ましてからレベルクリア後のカットまでは、実際に撮影された映像なんじゃないかと思ってます。2丁拳銃でローリングする強めの敵が出てくるところとか、すごく映画っぽいです。撃ち殺されたシーンも現実で、たぶんMartinは本当に死にました。夢の中でRichardがMartinの「ただの映画だ」という発言を笑ってたのは、Martinの死が映画じゃないからです。

 まあそれだとテーブルの上に台本があったのは何だったんだってことになりますが、そこは幻覚でいいんじゃないですかね (適当)。

 すると件のインタビューですが、Martinはこの夢の元となったインタビュー[2-4: Final Cut]以前で実際に受けてた可能性があると思います。なぜなら[2-20: Release]でEvanが本の執筆よりも家族を選んだ場合、エンディングでMartinのインタビューがオンエアされてるからです。実際のインタビューは、特に当たり障りなく終わったのかもしれません。

問題発言
問題発言

 しかし夢の中のインタビューでは、Martinはすごく過激な発言をしてました。個人的にこれは、Martinがグロ趣味を持っていたというよりは、彼が名優ゆえ、演じるうちにJacketの役あるいは暴力を楽しんでいた前作のプレイヤーと同調してしまったんではないかと解釈してます。

 RichardがMartinを「人を傷つけるのを本当に楽しんでる」と評したのは、前作の「人を傷つけるのは好きか?」と繋がるメタ発言です。前項の画像の『Rを押しても生き返らない』演出も、プレイヤーに向けたパロディです。

 だから、ぶっちゃけMartinの死にはストーリー的な意味なんか無くて、ただ彼がこのゲームのプレイアブルキャラクターだったから死んだんじゃないかとすら思ってます。なんとなく、Martinの名前がブタマスクと一致してないのも意図的なもので、彼がどちらかと言えばプレイヤーに近い演者であることを表してるような気がします。

映画『Midnight Animal』は実在するのか

 いきなり根本的な話に戻りますが、映画の存在自体が夢だったというオチは無いはずです。Hotline Miamiの世界には『Galaxy filmによるマイアミの殺人鬼を題材にした映画』が存在し、物議をかもしてるらしいことが、1991年12月9日の新聞に載ってるからです。

[2-10: Into The Pit]イントロ
Galaxy film once again received heavy critique over latest block buster...
...Sparked a controversy over the film adaptation of Miami Maniac murders.

 内容はこれだけですが、明らかに『Midnight Animal』を指してます。それなら実際に撮影も行われてたはずです。

 しかし、もし本当に主演俳優が死ぬなんて事故があったら、もはや映画化の是非を議論している場合ではないですよね。だとすると、この新聞記事はおそらくMartinが死ぬより前のものです。なので筆者は、日付が表示されない[2-4: Final Cut]は、1991年12月9日以降の出来事だろうと考えてます。

映画『Midnight Animal』お蔵入り説

 私がこのデタラメな説を思いついたのは、エンディングに出てくるRachaelを見た時でした。

エンディングのRachael
エンディングのRachael

 なんか微妙にやさぐれてませんか?

 いや、実際のエンディングだと、ちょうど直前に同じボトルを2本転がしている憂鬱なPardo警部のシーンがあるんです。だからこの落ちてるビンが酒だと分かって、なんかそんな気がしてしまいました。でもここで突然、彼女のやさぐれ気味な一面を見せる意味とは……。

 それを考えててブッ飛んだ結果が、映画『Midnight Animal』お蔵入り説でした。個人的な理由でやさぐれることもあると思うのですが、撮影中に主演俳優が死んでしまって映画がお蔵入りになったことでやさぐれてる可能性もあるからです。さらに『セットの銃に実弾が入ってた』説を採用する場合、事故とはいえ彼女はMartinを射殺してます。もっと荒れててもいいくらいですね。

 妄想どころか幻覚入っててすみません。

 でもRachaelのこれが無かったとしても、実際に[2-4: Final Cut]クリア後のデモで監督は「もう少し撮るシーンが残ってる」と言ってました。残りのシーンが全部ブタマスクなら代役でワンチャンあるかもしれませんが、どうしてもMartinが必要なシーンだったら、続きは撮れないし『Midnight Animal』自体が頓挫しててもおかしくないと思います。

おまけ

 なんかめっちゃくちゃ嬉しそうなRichard。

 以上、長々と妄想にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。