ハードモードの意味深なイントロについて
Hotline Miami 2のエンディングを1回見た後、タイトル画面の『NEW GAME』から『HARD』を選択して開始すると見られる、意味深なデモについて色々考えました。
ネタバレが本当にやばいのでちょっと下げます。
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
各人の死の状況を再現してる?
このデモの内容は、謎の密室にてテーブルに会した一同がRichardに蹴散らされるというものです。
だいたい合ってる。
所要で[2-25: Apocalypse]を周回していた時に思いましたが、この死体たちは各人の死の状況を再現しているようです。
皆が座っている位置は画像参照です。実際に会話の中で死んでいった順番と、死体の状態は以下の通りです。
- Jake (頭を撃ち抜かれてる)
- Martin (撮影シーンの最後と同様にハチの巣)
- Corey (腹から内臓が飛び出してる)、Tony (頭を撃ち抜かれてる)、Alex & Ash (頭を撃ち抜かれてる)、Mark (頭が割れてる)
- The Henchman (頭が割れてるが他の箇所は見えない)
- The Son (血の海で全身複雑骨折)
- Richter (ガイコツ)
- Pardo (ガイコツ)
- Evan (ガイコツ)
- Beard (ガイコツ)
会話の中で死んだ順番と、ゲーム中またはストーリー中の時系列で死んだ順番は関係なさそうです。どうでもいいけどThe Henchmanをひっくり返して見てみたい。
死の状況を再現しているという点では、説得力があるのはガイコツになった人たちです。Beardは1986年にサンフランシスコへの核攻撃で、残りのメンバーはエンディングの核攻撃で吹き飛んだという共通点があります。
また、それを踏まえるとMartinは、[2-4: Final Cut]のあのシーンで本当に死んだことになります。全体的に現実味の無い[2-4: Final Cut]ですが、Martinが死んだと仮定する根拠があるとすれば、このシーンかもしれません。
マスクキャラの扱いとRichardのメタ発言
マスクキャラのJake・Martin・Richter・The Fansは、皆マスクをつけた顔グラです。
Jakeは本編中で一度もマスク姿で喋ってないので、ここだけコブラマスクの顔グラが出てきてちょっと不思議、というか怖いです。Richterは一応、[1-11: Deadline]のJacketの家でマスク姿で喋ってましたね。
しかし、RichterもJakeも死亡時にマスクはつけていませんでした。上で『各キャラの死の状況が再現されている』と書いたばかりですが、これは深く考えるべきなんだろうか……。
当初私は、ここでマスクキャラがマスクをつけているのは、プレイアブルキャラクターとしての彼らが居るからではないかと考えていました。なぜならRichardの最初のやりとりがこうだから。
「全員戻ってきたわけか? なぜ? どんな結末を迎えるか分かってるんだろ?」
これ、Richardはテーブルについた皆に向かって言ってるはずなんですけど、個人的にはこの「全員」にプレイヤーも含まれてる気がしてならないです。
なぜなら皆がここにいるのは、プレイヤーがハードモードを開始したからです。プレイヤーは「結末」つまりこのゲームのエンディングを見たくせに、また戻ってきたんです。もともとRichardには、Hotline Miamiの象徴的なメタ台詞 「Do you like hurting other people?」 の前科がありますし、そういうメタ発言をしても不自然ではない生き物です。
もしそうだとしたら、Richardのその問いに対してプレイヤーは、やはり「人を傷つけるのが好きだから」と答えるしかないように思えます。ここにいるキャラたちはプレイヤーの望みで生き返り、またマスクをかぶって人を傷つけるからです。なので、プレイヤーが操作する状態の彼ら=マスクの姿で出てきたのではと
いや、それならBeardは1985年の姿で出てくるはずですね。後述しますが、Beardは1986年のヒゲと服装です。
ということは、ここにはただ単純に死んだときの彼らがいて、マスク組は死亡時の状況にかかわらず、マスクをかぶっているというだけなのです。なんだったんだこの項は。
Richterの会話と1との繋がり
このシーンのRichardのセリフには、Hotline Miamiの色々な謎を考える上で手がかりになるものがあると思います。その一つが、次々と死体が増えていく中で、Richterが口を開いた時のものです。
ここでのRichardとRichterのやりとりは、ほんとにこれだけです。会話未満。
この流れだとビビってるように見えるRichterは、ニワトリマスク姿のRichardをJacketだと思って謝ったのだと思います。Richterは[1-13: Assault]でも、The Girlを殺したことをJacketに謝罪してました。
しかしこれに対するRichardの答えは「俺はお前が考えている俺では (あんまり) ない」です。このことから、少なくともRichardはJacketとは別の存在のようです。でも「not really」ということは、完全には否定してません。確かにRichardは、憑りつく相手が居ない時はJacketの服を着ているし、まったくの無関係のようには見えないですしね。
そして上記引用部の下線つきのセリフですが、ちょっとだけ似た言い回しが[1: Part Three Visitations]のイントロに出てきていました。
Richardの「3つの予言」の1つ目、「お前が知っている誰かはお前が考えているような彼ではない」です。
よって、RichardがRichterへの返答で意図的にこの言い回しを使ったんだとしたら、この「誰か」はRichterを指しているということの答え合わせになるかもしれません。
Jacketから見たRichterは、自分たちを殺そうとした悪人で、Jacketの夢の中でも非常に感じが悪い描写をされてました。しかし2で描かれる通り、実際は母親思いの優しい男で、50 Blessingsに脅迫されて犯罪を行っていました。これはRichardの予言と合致します。
Gamer's Editionに付属の冊子にも、作者のひとりDennisによる「Richterは1では純粋悪として見られた。2では、母親を守るために動く違ったRichterを紹介した」との記述がありました。Beardの背景のように、これが1の頃から存在した設定なら、恐らく「誰か」とはRichterのことなのだろうと思います。
が、「Jacketが知っている誰かがJacketが考えているような誰かではない」というだけなら、BikerやRichardも全く該当しないとは言えません。なのでこのハードモードイントロのセリフの推測が正しければ、その「誰か」がRichterであるという解釈が補強されるので、個人的には嬉しいです。
ところでRichterも50 Blessingsに脅迫されていたのだという事実は、Jacketも[1-13: Assault]でRichterから聞いて認識しました。2でRichterが生存しているということは、史実ではJacketは[1-13: Assault]でRichterを殺していません。(初見ではほとんどのプレイヤーはRichterを殺したんじゃないかと思うのだが……)
脅されていたと聞いただけでJacketは素直に引き下がったのか? もしかしたら、Richardの予言があったおかげで思いとどまったのかも……?
Beardの会話と「前に会った」の謎
最後に残ったRichardとBeardの会話も意味深です。こちらも以下に全文引用します。
なお、このシーンのBeardのグラフィックは1986年のもの (毛が長く、軍服ではないシャツ) です。サンフランシスコ爆撃で死んだときの容姿ですね。
他の人に比べてRichardの当たりが優しいような……。(気のせいでしょうか)
Richardのひとつ目のセリフの下線部は、明らかに[1: Part Four Connections]イントロでのRichardのセリフが意識されてます。撃たれたJacketが見ている悪夢の中で、今まで居た馬マスクとフクロウマスクが姿を消しており、Richardが「とうとう俺とお前だけになった」と言うシーンです。
そうです。こっちが明らかな意図的な仕掛けだったので、筆者は前項のRichterのセリフも、意図されたものなのではと推測したのでした。(関係ないけどRichardのセリフには 'end' という単語がかなり多い。)
そしてRichardのふたつ目のセリフ、「これはお前が頼んだことじゃない」もまたメタ発言っぽいですね。じゃあ誰が頼んだのかというと、やはりプレイヤーだからです。
……が、これらの会話に関しては、RichardよりBeardのセリフ「前に会ったことあるよな?」が一番の謎です。BeardはRichardと会ってないはずでは? 誰のことを言ってるのか?
Jacketのことを指しているわけではないと思います。それなら「覚えててくれて嬉しい」のは他人事すぎるし、何より直前にそれをやらかした (=RichardをJacketだと思った) Richterと比べて、Richardの反応が違いすぎます。でもBeardならOKとかだったらどうにもなりません。それだったら本当にいつか別の形で再会してくれ。
では、Beardが会ったというRichardがJacketではないとすると、他にRichardっぽい何かがいたか……?
候補を挙げるとすれば、[2-16: Casualties]イントロのパンサーの皮をかぶったThe Colonelです。Beardのレベルには、他にはそのような怪しい生き物は出てきませんでした。
[2-16: Casualties]のイントロ開始時、画面左上にThe Colonelがパンサーの血で書いたと思しき50 Blessingsのロゴが映り込みます。そのことから、The Colonelはおそらく50 Blessingsの創設に関わってます。
また、The Colonelはハワイ戦争で中将に昇進していますが、エンディングで「クーデターの首謀者はアメリカ軍の将軍 (U.S. army general)」であると報道されていました。これが同一人物なら、あの時The Colonelがとらわれた狂気こそが、エンディングでアメリカが核攻撃を受けることになってしまったきっかけとも言えるような気がします。
それとRichardに同一性があるのだとすれば、Richardは50 Blessingsというアメリカを破滅に導く存在とともに生まれた死神のようなものなのでしょうか? それともRichardの存在が先で、Richardを受信したThe Colonelが50 Blessingsを作り出してしまったのか? RichardがJacketに憑いたのは、The Colonelの演説を聞いたメンバーの中で唯一の生き残りだったから??
ムチャクチャな説かもしれませんが、筆者がBeardのセリフの根拠を考える (ついでにRichardがJacketの服を着ている理由を説明する) と、こんな感じになってしまいました。実際、Richardは皆の死を予兆するように現れたりと、とてもJacket個人が作り出した何かだとは思えないところがあります。やっぱり死神なのかな……。
以上、長々と妄想にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
おまけ
The Henchmanが死ぬ前にBボタン長押しで会話を終了させると、なぜか彼が生き残ります。
ちなみにこのシーンは、カメラが左のほうにいるキャラを映してる時にスキップして終了すれば、最後にカメラが右に流れていくときにスクショを画面の真ん中で撮れます。(会話を最後まで見ると右のRichardにフォーカスした状態で終わるので、真ん中では撮れません。)