怪電話のメッセージ全文と考察
Hotline Miami (1・2) ゲーム中にて、主人公たちに届けられる電話のメッセージ (+α) 全文と、それらに関する考察および妄想です。
なお、このページは当サイトの以下のページを前提に書いてます。よって、「電話のメッセージはあらかじめ録音されたものである」「Jakeは留守電ではなくリアルタイムで電話を取った」「JacketとJakeも本編より前から脅迫電話を受けている」として考えてます。
また、例の清掃員の二人の名前はそれぞれJonatan・Dennisとしてます (2のLevel Editorの歩行グラ名で確認できます)。茶髪であごひげが生えてるのがJonatan、金髪で鼻ピアスをしてるのがDennisです。紛らわしいですが、ゲーム制作者のJonatan氏とDennis氏について書く場合は「作者の」と付けていますので、あらかじめご了承ください。
もくじ
- ベーカリーのTim
- クッキーの成分表
- ベビーシッターが必要なLinda
- 50 Blessings 入会者への挨拶
- メタドンクリニックのThomas
- Hotline MiamiデートサービスのKate
- Blakeの停電修理依頼
- マイアミ有害生物駆除のDave
- Hotel BlueのDon
- 管理のHarry
- 「計画が少し変わった」
- クラブのPat
- 不動産屋のRick
- Downtown RelaxationのThomas
- オフィスのJim
- マイアミ運送のMark
- Janeのデートの誘い
- マイアミ斎場のBen
- マイアミオートリペアのEric
- 保育所のMary
- マイアミ葬儀社のSusan
- 速達郵便のAndrew
- 花屋のDan
ベーカリーのTim
1989年4月3日にJacketが確認した留守電。
「新しいメッセージがあります!(ピー) ベーカリーのTimです。ご注文のクッキーがもうすぐ配達されるはずです……。成分表を同梱しておきました……。よくお読みください!(カチッ)」
このメッセージのシーンで、Jacketの部屋の前に段ボール箱が置いてあります。中身はニワトリマスクと成分表 (内容は次項) でした。
段ボール箱の中にはニワトリマスクしか入ってないように見えますが、[2-5: First Trial]の裁判で並んでる押収品を見る限り、Jacketは逮捕時に少なくともブタマスクを所有していたことが分かります。突っ込むところではなさそうなのを承知で突っ込むと、ニワトリ以外のマスクも段ボール箱の中に入ってたんでしょうか。
でも、2でJakeがコブラ以外のヘビマスクを入手する時の演出では、運送会社らしきラベルが貼られた段ボール箱から新しいマスクが出てきました。それならJacketのニワトリ以外のマスクも後から送られてきたのかも。
郵送すると足がつくような気がするのですが、JonatanとDennisがそういうところでヘマをするとは考えにくいです。なので、何らかの方法 (公園に置いた箱を拾わせるとか) でほかの会員に荷物を渡して、それをそのまま郵送させるといった保険をかけていた可能性はあります。
クッキーの成分表
1989年4月3日にJacketの家に届けられた成分表。
「ターゲットはブリーフケースだ。慎重さが最重要だ。ターゲットをPoint F-32のゴミ箱の中に置け。失敗という選択肢は無い。我々はお前を見張っている」
かなり直球の指示書です。[2-5: First Trial]のJacketの裁判では言及されませんでしたが、これが残ってたらけっこう有力な物的証拠になってたのではと思います。捨てちゃったのかな?
前提のページにて、私は『Jacketは本編開始前から脅迫電話を受けている』説を考えました。実際、いきなりこんなの送り付けられたらいくらJacketでも通報するだろうから、やっぱりされてる気がします。なのでJacketも、Richterの車が燃やされたように色々と見張ってる感を醸し出された後、トドメにこれを送り付けられてるのかもしれません。デロリアンが無事でよかったですね。
すんげー直訳しましたが、ここで「慎重さ」とした 'discretion' や類似の表現で釘を刺すメッセージは、以降もたびたび出てきます。discreetには「慎重に」「分別を持って」「他人を困らせないように」「隠密に」といったニュアンスがあるそうです。以下ブログが大変参考になりました。
ベビーシッターが必要なLinda
1989年4月8日にJacketが確認した留守電。
「新しいメッセージがあります!(ピー) こんにちは、Lindaです。すぐにベビーシッターが必要です。躾が必要な子供たちがいるの。East 7th Streetです。よく彼らに言い含めてやってください、本当に誰かがこの悪ガキどもに叩きこんでやる必要があるわ。あと、前回みたいに……慎重にね!(カチッ)」
躾が必要だとか悪ガキに叩きこむだとか、かなり分かりやすいメッセージです。留守電で指令を受け取るのはこれが初回なので、プレイヤーに留守電のメッセージとJacketの殺人行為を結び付けさせるための説明台詞っぽいです。
こうして見ると「前回みたいに慎重に」という台詞は無理やりっぽいというか、ベビーシッターの依頼にしては不自然です。そこまでして入れたいセンテンスなんでしょうか。
50 Blessings 入会者への挨拶
[1-1: No Talk]のJacketの家、[1-17: Fun & Games]のBikerの家、[2-3: Hard News]のJakeの家に置いてある手紙。
※中身は違うものかもですが、同じスプライトの赤い紙が[2-15: Withdrawal]の50 Blessingsのオフィスと[2-20: Release]のFederal Correctional Institutionにも置かれてます。
「私たちのニュースレターをご購読いただき、ありがとうございます。私たちの運動にご興味をお持ちいただけたことを感謝いたします。アメリカは歌です。共に歌わなければなりません。50 Blessings」
愛国者組織『50 Blessings』のニュースレター購読の挨拶です。
見た目に違わぬ赤紙です (ここアメリカだけど)。Biker編TrueエンドのDennisのセリフによると、おそらく申込時に、会員は書面で「国のために死ぬことを厭わない」と記入させられているとかいないとか。
しかしロシアを憎んでいるであろうJacketと右翼っぽいJakeはともかく、Bikerがそれにサインしたというのはあんまり想像がつきません。BikerはTrueエンドで「俺は政治には興味が無い」と言ってますし、そもそもブタマスクの男に「面白いことになる」と勧められて入会して逆ギレしてたわけで、ぜんぜん本心から誓ってはいなかっただろうと思います。ていうか何を期待してたんだよ。
Richterの部屋ではこの手紙を見かけませんでしたが、彼も会員のはずですよね。でもRichterには、本編中ではロシア嫌いや愛国者の気は無いように見えるので、微妙に経緯が謎です。彼は母を残して国のために死んでる場合ではないですし。
ちなみにJacketらの部屋にこれが置いてあるのは、いずれも彼らが脅迫電話を受けて、実際に行動を起こしてからのタイミングです。そうでないとプレイヤーが読めないからだと思いますが、本当に当日に届いたものが置かれてたのだとしたら、JonatanとDennisは入会挨拶を送るより先にイタ電をかけてたことになります。
ただしBikerは本編開始時点ですでにイタ電にうんざりしてた様子なので、ふとこれの存在を思い出して、ブタマスクの男のところにすっ飛んでいったのかもしれません。その場合、Bikerの部屋にあったこれは、以前に届いたものを出して見返してただけかも。
メタドンクリニックのThomas
1989年4月16日にJacketが確認した留守電。
「新しいメッセージがあります!(ピー) メタドンクリニックのThomasです。私たちは今夜、あなたとの短い面会を予定しています。こちらはNW 184th St, apt 105です。心配しないでください……クライアントにとって慎重さが最重要であることは分かっています。……(カチッ)」
メタドンクリニックはヘロイン中毒治療の病院です。レベル名とメッセージの内容がオーバーラップしてますが、序盤からなかなか不安になる演出だと思います。初回プレイで事情がまったく分からない状態でこのレベル名を見せられたら、Jacketが薬中なんじゃないかとミスリードされそうです。
最後のセンテンスは、公式日本語訳だとシンプルに「秘密は守ります」という感じだったと思いますが、前述したように「慎重さ」というニュアンスが出てくるメッセージが複数あるので、不自然ながらここでは揃えてみました。
また、時間帯が指定されてるメッセージのひとつです。以降、時間帯を指定するものはわりと見受けられます。このゲームは建物の外の様子が全然分からないので、一日の中の時系列が分かる手がかりは貴重です。
ちなみにメッセージでは全く触れられていませんが、このレベルにはセイウチマスク (Earl) の男の死体があります。後述しますが、トラマスクやヘビマスクの時はメッセージの中で彼らの存在がほのめかされてるのですが、ここはそうでもないみたいです。
以下完全に妄想になりますが、あえてそこに理由をつけるなら、恐らくセイウチマスクの男はオフのところを殺されたからじゃないでしょうか。
シチュエーション的にセイウチマスクの男の死体は、自室でくつろいでいたところにロシアンマフィアが突入してきて、拷問された挙句に惨殺されたように見えます。たぶん彼も過去に電話の指示でロシアンマフィアを襲ったことがあり、その時は無事に仕事を終えて帰宅したのですが、けっきょく身元が割れて報復を受けたものと思われます。
そうだとするとセイウチマスクの男は、電話で指示を受けて行った先でヘマをしたトラマスクたちと違い、少なくとも任務中には死んでません。Jacketはヘマをした仲間の代役として呼ばれたわけではなく、単に報復された仲間の後片付けに行かされただけです。だからこの時は、Jacketに「お前はしくじるなよ」とあえて釘を刺すメッセージを送る必要が無かったのかもしれません。
でも本編でJacketが殺したロシアンマフィアたちがセイウチマスクを殺した奴らだったとしたら、わりと直前までセイウチマスクの男は生きてたかもしれないですね。この家って子供部屋がありますが、彼の家族はどこ行ったんだろう。
Hotline MiamiデートサービスのKate
1989年4月25日にJacketが確認した留守電。
「Hotline MiamiデートサービスのKateです。あなたのために本日夕方にデートをセッティングしました。彼女はSouthwest 53rd Placeであなたを待っています。いつものようにおしゃれな服装で。……(カチッ)」
略されてるだけかもしれませんが、このメッセージからしばらくは 'You have one new message! *BEEP*' がありません。でも留守電ランプは点灯してるし、仮にリアルタイムで電話を取っていたとしても特に見かたが変わることは無いと思います。
服装に言及されるメッセージのひとつです。このパターンは、BikerとRichterが受け取ったメッセージにも見受けられます。十中八九「マスクをかぶって行け」という意味だと思いますが、考えてみると「マスクをかぶって行け」というはっきりした指示はどこにも無いので、みんな察しが良いです。いや、Bikerの察しが悪いとは言ってません。
ちなみに 'dating service' は、出会い系っぽいニュアンスの言葉らしいです。すると『Hotline Miami』というのは、架空の出会い系サービスの名前なんでしょうか。ここは『Hotline Miami』という名詞がゲーム中に出てくる唯一のシーンです。そういう小さいとこからゲームのタイトルを取るのはなんとなく小説っぽいセンスだと思うので好きです。
しかも、そのようなメッセージの後でThe Girlと出会うのも素敵です。ただ、以降のレベルを見る限りだとJonatanとDennisはけっこう周到に現場の状況を確認してるっぽいので、監禁されてる彼女の存在を把握していてこのメッセージを考えたなら、ずいぶん悪趣味なような。
あの二人はThe Girlを連れ帰ったJacketのことをどう思ってたんだろう? と思いましたが、結局Richterに殺されたのが答えだったのかもしれません。
Blakeの停電修理依頼
1989年5月5日にJacketが確認した留守電。
「こんばんは! Blakeです。あなたの仕事があります。停電です……。24th NE Stでその対処をお願いします。少し前に別の者を送りましたが……彼は良い仕事をしなかったようです。すぐにそちらに向かってください! 彼らがあなたを待ってます。素早く、清潔に心掛けてください!(カチッ)」
他のマスク男の存在をほのめかすメッセージが出てきました。ここで言及されてる「少し前に送った別の者」というのは、爆弾部屋で尋問されてたトラマスク (Tony) の男のことだと思われます。
しかし、あの爆弾部屋は頭上視点のプレイヤーからは中が見えましたが、Jacketには扉を撃って爆破しない限り中を見れなかったはずですよね。爆発させた跡も悲惨なもので、トラマスクの男の死体は残ってませんでした。
ということは、Jacketは次レベルの[1-5: Full House]に出てくる新聞記事 (爆発音と「複数のマスクの容疑者」について書かれてます) を読んで、初めて自分以外のマスク男がいたことを認識したかもしれません。
マイアミ有害生物駆除のDave
1989年5月11日にJacketが確認した留守電。
「マイアミ有害生物駆除のDaveです。あなたの手が必要です。SW 104th Streetのお客が害虫の問題を抱えています。可能な限り素早く、迅速に対処してください。あなたが出た後、他の者が清掃します。ご近所に迷惑をかけないように。……(カチッ)」
躾が必要な悪ガキども以上に憎しみを感じるメッセージです。これくらい陰湿なセンスが無いと50 Blessingsの実験部隊は務まらないようです。
他の者が来るそうです。このレベルって、クリア後に別のマスク男が何かしに来たんでしょうか。当初は清掃と聞いて、清掃員の恰好をしてるJonatanとDennisが証拠隠滅に来るのかなとぼんやり思っていたのですが。でも、[1-3: Decadence]でJacketが映った監視カメラ ([1-4: Tension]イントロの新聞に記載) は放置されてたようなので、証拠隠滅してくれるわけではなさそうです。
私は、このメッセージも他のマスク男の存在をほのめかすものだと思ってます。このレベルは、クリア後にバールでマンホールを開けて下水道に下りると、ワニマスク (Jones) 傍らに死にかけの男がいました。彼も[1-4: Tension]のトラマスク同様に、先に送り込まれて失敗したマスク男のはずです。
もし 'after you leave' が「Jacketがしくじったら」の湾曲表現だったとしたら、「Jacketが失敗したらまた別のマスク男が送り込まれる」という意味に取ることができます。さらに「ご近所 (neighbors) に迷惑をかけないように」も、[1-7: Neighbors]のレベル名から連想すると、「(Jacketも失敗して) 仲間の手を煩わせないように」という深読みが可能です。
真偽はともかく、いろいろと不穏な妄想の余地があるメッセージだと思います。
Hotel BlueのDon
1989年5月13日にJacketが確認した留守電。
「Hotel BlueのDonだ、今夜来てほしい! 受付が胃の調子が悪くて帰ってしまった……そして今日はVIPがここに滞在する日だ! 彼らを丁重にもてなしてくれ。それが今晩の最優先事項だ! すぐに取り掛かってくれ!(カチッ)」
ここで言われてる『VIP』は、レベル中でJacketが殺害した政治家3人を示唆してます。[1-7: Neighbors]イントロで読める新聞によると、彼らが殺されたことは、ロシア・アメリカ連合 (Ruso-American Coalition) に打撃だそうです。
彼らが親ロシア派のアメリカの政治家なのか、ロシアの政治家なのかは判りません。が、ロシアの政治家を殺したのでは2のエンディングに直行しかねないので、私は前者だと思ってます
。あとここ、1フロア目のレストランの左下 (画像) で、政治家と同じテーブルについてるロシアンマフィアの態度がめちゃくちゃデカイのも気になります。ロシアンマフィアと癒着してる政治家だったのかな。(※一度だけ膝を揃えて座っているパターンも見ましたが、条件は不明です。)
そしてメッセージ本文ですが、今夜と言いつつ「すぐに取り掛かってくれ」ってことは、この留守電はけっこうギリギリにかかってきてるはずですよね。メッセージが録音なら、JonatanとDennisも収録のために大急ぎでイタ電をかけまくってたはずです。というか、Hotel Blueなんて場所がはっきり分かるメッセージを喋らされた人は、あとでこのホテルで起こった事件を知って真っ青になったのではなかろうか。Hotel Blueだけに。
さて、このメッセージも勘ぐりポイントがあると思います。「受付が帰ってしまった」と第三者の存在をほのめかしたり、やたら緊急性を強調したりといったところが、トラマスクやワニマスクの時のメッセージを彷彿とさせます。でも現場には他のマスク男がいることもなく、清掃負の格好をしたJonatanがいただけでした。
そこで個人的に気になったのが、同日 (5月13日) にBikerが[1-16: Safehouse]で動いてるところです。完全に妄想でアレですが、この政治家殺害の指令は本来ならBikerがやるはずだったんじゃないか?
この日、Bikerはブタマスクの男とタコマスクの男をすごい勢いで尋問してました。キレてるBikerは「何か大事なことを隠してるだろ」みたいに言ってます。さらにBikerは、[1-17: Fun & Games] (5月16日) の留守電 で「昨晩の配達に失敗した」と釘を刺されてます。
日付が少し離れてて説得力が薄いのですが、その『昨晩』というのが『前回の指令』という意味だったとしたら?
そうすると、Bikerも5月13日に「Hotel Blueに行け」というメッセージを受け取っていたけど、報道などから事前に『VIP』の正体に気づいて命令に従わなかった……という妄想ができなくはないのです。そして自分がとんでもない騒動に巻き込まれたことを知って、[1-16: Safehouse]のイントロに繋がったのかも。
実際、TrueエンドでBikerが「ロシア・アメリカ連合 (Ruso-American Coalition) を壊せると思ってこんな方法を使うのか?」と言及してるので、結構アリな説なんじゃないかと思ってます。ゲーム中でロシア・アメリカ連合という名詞が出てくるのは1・2通しても3箇所だけで、1に於いてはこの項の先頭で書いた新聞記事と、TrueエンドのBikerのセリフだけなんですよ。結び付けたくてしょうがない。
管理のHarry
1989年5月23日にJacketが確認した留守電。
「管理のHarryだ。問題が起きた! 122nd SE Stのコンドミニアムが大混乱に陥っている! 住居の水道管のひとつが破裂して、床が水浸しだ! すぐに建物全体が水浸しになるだろう……。可能な限り早く取り掛かってくれ……モップを手加減するな!(カチッ)」
特に言及するところがない普通のメッセージだと思います。このレベルは次の電話があるから、あっさりしたメッセージにしたのかも。
現場はこれ、コンドミニアムなんでしょうか? 日本人なのであまりピンときません。もちろん水浸しでもないです。血で水浸しになりましたけど。
「計画が少し変わった」
[1-7: Neighbors]を掃討直後に、現地にかかってきてJacketが取った電話。
「計画が少し変更になった……。電話会社にいたずら電話をしてる奴がいる。そこに行って……そいつに『言い聞かせて』こい。意味は解ってるな。342nd NW Stだ。今すぐに行け! 全速力だ。……(カチッ)」
このメッセージにて、緊急時はJonatanまたはDennisが直接電話してくることが判明しました。外で出会う二人が無言なのは、声バレを防ぐためだったりして。そしてリアルタイムでも湾曲表現に終始するのは流石です。
向かわされた先はPhone Homでした。彼らのメッセージはいつも、場所についてはほぼ現地とマッチしたことを言ってるので、これもそうだとするとPhone Hom社は電話会社のはずです。
しかしプレイヤー的には超重要なメッセージでしたが、Jacket目線で考えると、これも幾多の怪電話の一つでしかないように見えたと思います。指示も住所だけだし、Jacketはたぶん、最後までPhone Hom社と怪電話との繋がりには一切気づいてません。ロシア人憎さに、あえて深く考えずに脅迫に乗って殺しまくってたのかもですが。
クラブのPat
1989年5月27日にJacketが確認した留守電。
「やあ、クラブのPatだ。今夜、あんたのDJが欲しくてな。やりたいように好きな音楽をかけてくれていい。ビールを奢るぞ! 212 NE 24th Streetだ。バッチリ決めてこいよ! それじゃ……。……(カチッ)」
知らなかったんですけど 'Dress to kill' ってすごい言葉があるんですね。行った先の住所もクラブでした。
このレベルはフロアのド真ん中でバッタマスク (Carl) が死んでるはずですが、メッセージでは特に触れられてません。ここまで見てきたように、トラマスクなんかはメッセージ内で嫌味っぽくヘマを指摘されてたものですが。
もしかしてバッタマスクは、電話の指示とは無関係にクラブに乗り込んでいって殺されたイカレポンチだったんでしょうか。上で書いたセイウチマスクの例があるので、無くは無いと思います。もしくは電話で指示を受けたけど、真正面から突っ込んで早々に死んでしまい、JonatanとDennisにも見なかったことにされたとか……。
どうも微妙に頭が弱そうな想像をしてしまいます。すみません。
不動産屋のRick
1989年5月31日にJacketが確認した留守電。
「不動産屋のRickです。本日、ダウンタウンでアパートの展示会があります。SW 121st St, apt 35です。ご希望の方に公開しております。お時間がございましたらお立ち寄りください。……(カチッ)」
いつでもいいと明示されてる珍しいメッセージです。ちなみにRickという呼び名はRichardの愛称だそうです。
誤記か意図的かは不明ですが、実際にJacketが行った住所はNE 24th Stでした。アパートと言われてたけど、現地はあんまりアパートっぽくないです。1階にビリヤード場や噴水があって、2階の大きな机の上に大量の薬物らしきものが置いてありました。これのせいで元々警察にマークされてた建物だったから、SWATに突入されたのかも。本当にいつでもいいんだったら、なんともタイミングが悪かったですね。
Downtown RelaxationのThomas
1989年6月3日にJacketが確認した留守電。
「こんにちは、『Downtown Relaxation』のThomasです。今夜、受付の代わりをお願いたいです。従業員の一人から『病欠の連絡』がありまして。雰囲気に合った落ち着いた服装でお願いします。……(カチッ)」
どうでもいいですが、メタドンクリニックのThomasと名前がかぶってます。
メッセージに『代わり』とか『病欠』とかいうワードが含まれており、案の定、このレベルではコブラマスク (Jake) が死んでました。病欠のところを強調してるのはなんででしょうか。気にするほどのことではないかもですが、前の直電みたいで怖いです。
深読みするとこの強調には、これまでのメッセージに含まれてた『他のマスク男のほのめかし』をプレイヤーにそうだと気づかせる意図があるのかもしれません。ポンコツの筆者はこのページを書くために全メッセージを書き起こしてやっと気づきましたが、読解力が鋭い人ならちゃんと一周目で気付けるように工夫されてたみたいです。
ところで同日のJakeにかかってきた電話では、Jakeの任務は「今夜7時に」とのことでした。それでJakeが失敗して『病欠』扱いになったのだとしたら、Jacketにこの電話がかかってきたのは19:00以降ということになります。そのうえで期日が今夜なのは中々のハードスケジュールですが、Jacketが早く寝てたらどうする気だったんだろう。というかJacketは、19:00以降にかかってきた電話が留守電になるような生活をしてるんでしょうか??
それに、よく考えたらJacketが行かされたのはDowntown Relaxationで、Jakeが行かされたのはNW 159th Stでした。なんでJakeのヘマをJacketが別の住所でカバーさせられてるんだろう。なんかよく分からないです。
無理やり辻褄を合わせるなら、Jakeが連れていかれたことでこの建物がロシアンマフィアの巣窟だと判明し、JonatanとDennisが大急ぎでメッセージを作ってJacketを差し向けたという説になります。とはいえEastとNorth Westにある二地点ではそれなりの距離がありそうなので、連れていかれたJakeをあの二人が頑張って追跡したということになるが……。
オフィスのJim
1989年6月8日にJacketが確認した留守電。
「『オフィス』のJimだ……エヘン。『レポート』の期限が明日の朝までだと君にリマインドしておきたくてね。8時までに私のデスクに持ってきてくれ。忘れてしまったときのために、住所は312 SE Stだ……。……(カチッ) (カチッ)(カチカチッ) (カチカチッ)(カチッ)……(カチッ)(カチッ)(カチッ)(カチッ)(カチッ)(カチッ)……(カチッ)」
すんごく気持ち悪いメッセージです。なんとなく脅迫じみた雰囲気に、住所の表記も変だし、なんだか分からないけど強調されてる『オフィス』と『レポート』、極めつけは最後のカチカチカチカチ。
しかもこのシーンでは、上の画像の右下にも見切れてるように、ロシアンマフィアのデブが血まみれでJacketの部屋の冷蔵庫を漁ってます。Jacketの正気を疑わない方が難しいというものです。
この切羽詰まった感じは、個人的にはBikerが命令を無視した後に受け取った警告のメッセージと近い気がします。と言ってもプレイヤーが見てる限りでは、Jacketは (やたら住所を間違えてたことを除けば) Bikerのように指示を無視したりはしてないはずですが……。
他に『レポート』に該当しそうな期限付きの指示や、指示を破ったとみなされそうな落ち度がJacketにありましたっけ。強いて言うなら、The Girlを殺さずに連れ帰ったことでしょうか。実際、このChapterの後でRichterは、JacketだけでなくThe Girlも殺してます。もしRichterが受けた指示に彼女を殺すことが含まれてたのなら、Jacketの『命令違反』は彼女を殺さなかったことだったのかもしれません。
ところで不気味なカチカチカチカチについては、Jacketの記憶が混濁していることを表す演出だとずっと思ってました。これがJacketが夢の中で見る最後のメッセージだからです。
しかし今これを書いてて思いましたが、ここ一か所だけ記憶の中のメッセージがおかしくなってる演出なんて使うでしょうか。そんなことしたら、Jacket編の前半は本当に全てが信用できないことになってしまうような。
一応、カチカチも現実にJacketが聴いたものだと仮定することはできます。電話のメッセージはJonatanとDennisが会員を脅して喋らせてるものだから、メッセージを喋らされた人がテンパってて受話器をうまく置けなかったのを、そのまま録音してしまったとか。もしくは、再生してるカセットテープを止めるタイミングを誤ったとか。そう考えると、案外これはメッセージが録音されたものであることを示唆する演出だったり
いや、無理がありますね。
実際に現地はメッセージの通り、パソコンのデスクがたくさん置かれたオフィスでした。エントランスに車が突っ込んでくるビルですね。しかし8時前のオフィスなのにずいぶん人が多いです。あいつら銃持って何の仕事してるんだ。
そしてこのレベルは、クリア後にJacketの家でRichterが待ってます。「明日の朝8時まで」というのが言葉通りの緩い指定なら、JonatanとDennisはわざわざJacketが出て行ったのを確認してからRichterに連絡を入れたはずです。というかここ、Richterの家の留守電にJacketの家の住所が入ったメッセージが残ってた可能性が高いですね。やっぱりマイアミ警察が本気で調べてれば、二つの事件はちゃんと繋がったのでは……?
マイアミ運送のMark
1989年5月16日にBikerが確認した留守電。
「マイアミ運送のMarkだ……。君は昨晩の配達をし損ねたようだな。今日の君のために別の荷物がある。SW 107th Placeまで届けてくれ。これ以上の遅配は客が許さないぞ! ……(カチッ)」
筆者はこの『昨晩の配達』を、Hotel Blueの政治家暗殺の件だと思い込んでます。そちらについてはリンク先のメッセージでどうぞ。
現地はゲームセンターでした。Bikerは[1-16: Safehouse]ですでにPhone Homの存在を掴んでますが、メッセージで釘を刺されたので、ここは一旦指示に従った感じでしょうか。でも支給のマスクをかぶってないですね。いや、ゲーム的にもこれでPhone Homに直行してたら、Bikerで遊べるレベルが無くなっちゃいますけど。
メッセージと関係ありませんが、このレベルはプレイヤーにBikerのキャラを伝え切ってる感じがすごいです。チャラチャラした部屋に、現地のゲーセンの雰囲気に、レベル名もFun & Gamesです。テーブルに50 Blessingsの赤紙が乗ってるのが異質なくらいです。
そこらへんの見解は赤紙の項に書いた通りですが、次点として『退屈な青年がフラストレーションのはけ口としてなんとなく愛国活動に手を出した結果、大変なことになった』という説もちょっと考えてたりします。Bikerが銃を使えないのは、従軍経験が無いからなんじゃないかなと思ったり。
Janeのデートの誘い
1989年5月23日にBikerが確認した留守電。
雑な直訳……「Janeです。再会できて嬉しかったわ。今夜またデートするのはどう? 9時ごろ、NE 158th Stまで私を迎えにきて。あなたが持ってるそのイカしたスーツのひとつを着てね。今晩はどこか素敵なところに連れてってくれるでしょ! ……(カチッ)」
親密さを感じさせるデートのお誘いです。知り合いからの電話っぽいものは珍しいですね。同名の知り合いがいたら、本気にして現地に行っちゃう人もいるかもしれません。
服装に言及するメッセージの一つでもあります。が、これはわざわざ 'one of those nice suits' という言い回しをしてるんでしょうか? そうだとしたら、BikerもJacketのように複数のマスクを持ってた可能性があります。
というか、Bikerが支給されてたマスクはどの動物だったんでしょうね。少なくともBikerがかぶりたくなるようなイカしたマスクではなかったことだけは確かです。足がつきそうな私物のヘルメットで殺人するくらいだし……。
マイアミ斎場のBen
1989年5月24日にBikerが確認した留守電。
「マイアミ斎場のBenです……。あなたが注文された墓石の配達準備ができましたので、ご連絡いたしました。運が良ければ週末までにお届けできると思います! ……(カチッ)」
1では一番はっきりした脅迫電話です。Jacketが電話に従わなかったらこうなってたということを、プレイヤーに説明するメッセージでもあるように思えます。
しかしわざわざここで予告したために、JonatanとDennisはBikerに逃げられてしまってますよね。確認したところ、1989年5月24日は水曜日なので、週末までには少し猶予があります。それともまだ木曜日か金曜日にメッセージが送られてきて、怖気づいてそれを遂行すれば助けてもらえたんでしょうか?
でもあの二人は[2-20: Release]でこれから (間接的に) 始末するRichterに会いに来てたりするし、単に悪趣味なだけかもです。というかあの二人がやることなすこと悪趣味です。やはりこれくらい悪趣味でないと、50 Blessingsの実験部隊は務まらないようです。
マイアミオートリペアのEric
1989年4月25日にJakeが取った電話。
「こんにちは! マイアミオートリペアのEricです。修理が完了したことをお伝えするために、ご連絡いたしました……(不明)……NW 12th Aveまでお立ち寄りのうえ、引き取りを……(不明)……この街で最高のサービスを保証いたします!(カチッ)」
(不明) の箇所は、Jakeが声を上げて電話を遮ったために聞こえない部分です。が、このメッセージで最も重要なのは、恐らくJakeがリアルタイムで電話を取ってる可能性が高いところです。
前提のページにも書いてますが、この電話の相手はJakeに遮られてるにも関わらずまったく反応しません。そもそも、電話を取る前に留守電ランプも点灯してないです。これらの仮定が正しければ、このシーンはメッセージが録音されたものであることを示す演出のはずです。
保育所のMary
1989年6月3日にJakeが取った電話。
「NW 159th Stの保育所のMaryです。今夜7時に保護者会を行います。(不明)……慎重に。(カチッ)」
前回のJakeと同様に、リアルタイムで取ってる可能性が高い電話です。
このメッセージですが、失礼ながら最後の 'discrete' は 'discreet' のスペルミスなんじゃないかなと思ってしまいました。なのでここではそっちのつもりで訳しました。
いや、保育所というのがベビーシッターのLindaと重なる気がしてて、あちらのメッセージでは最後が 'discreet' なんですよね。それに 'discrete' (別々の) だといまいち意味が分からないし、調べてみると英語圏の人もこの二つは混同してるとかどうとか。
上の方でも書きましたが、Jakeが夜7時に呼び出されたのだとしたら、後続のJacketはけっこうハードスケジュールです。
マイアミ葬儀社のSusan
1989年4月2日にRichterが確認した留守電。
「新しいメッセージがあります!(ピー) マイアミ葬儀社のSusanです……。本日、ご予約のスケジュールがあります。Rosa Berg様のご葬儀についてです。いつでも都合の良い時間にいらしてください。終日開いております。オフィスはNE 139th Stにあります。(カチッ)……」
作中で最も恐ろしい脅迫電話です。JacketやJakeは一人暮らしでしたが、守るものがあるとこんな風になってしまうんですね。Richterはこのメッセージを受け取る前に車が燃やされてるので、家にも火をつけられたらと思うと、指示に従う他は無かったと思います。
1989年頃のアメリカは土葬が主流だったとは思いますが、日本人的感覚だと葬儀といえば火葬なためか、余計に悪趣味で怖く感じてしまいました。ちなみに昨今はアメリカも火葬が増えてきてるらしいです。以下の記事によると、2000年には全体の25%だった火葬が、2015年にはほぼ49%に達しているそうです。
ところでレベル名のFirst Bloodですが、この日 (1989年4月2日) ってJacketの[1-Prelude: The Metro]のちょうど前日なんですよね。深読みしすぎかもしれませんが、もしかするとこれが、JonatanとDennisの計画で決行された最初のマスク殺人なのではとちょっとだけ思いました。もっと前からこういう事件が起きてたなら、Jacketが集めてた新聞の反応が初々しすぎる気がするので。
速達郵便のAndrew
1989年4月10日にRichterが確認した留守電。
「新しいメッセージがあります!(ピー) こんにちは、速達郵便のAndrewです。午後8時にNE 144th Stまで届ける品物があります。壊れやすい荷物なので、くれぐれも注意深く扱ってください。遅れないよう、そして制服の着用を忘れないように。(カチッ)」
ごく普通のメッセージです。住所と期日の指定があって、慎重にと釘を刺していて、服装に言及してます。このテンプレートを守れば、誰でも脅迫メッセージの原稿を書けそうです。
服装と言えば、Richterはマスクを受け取るシーンが描写されていませんが、[2-17: First Blood]の時点よりも以前にマスクを受け取ってるはずですね。
ここまで来ると逆に「どこそこの誰」という名乗りが必要なのか?と気になってきました。すると作者のDennis氏が、4Gamerのインタビューで、マスクに人名がつけられてることについて訊かれてました。その時の答えは、「それはシュールな世界観を作り出すための手段の一つとして考えました。主人公のジャケットは、いわゆる名もなき存在ですが、それぞれのマスクを見ることでいろいろな人格を妄想するわけです」というものでした。
それなら、留守電のメッセージも似たようなものかもしれないです。真相を知らないJacketたちは、電話の向こうに色々な人格を見てたのかも。
花屋のDan
1989年4月23日にRichterが確認した留守電。
「新しいメッセージがあります!(ピー) こんにちは、こちらは花屋のDanです。あなたに住宅地のガーデニングの仕事があります。NW 66th Stの素敵な古屋です。見つけにくいはずです。仕事はかなり簡単で、どうすればいいかは分かると思います。制服を着用して行ってくださいね。(カチッ)」
珍しく現地へのアクセスについて触れられてます。JonatanかDennisが下調べに行ったとき、本当に分かりにくいと思ったのかもしれません。
実際、現地はロシアンマフィアの武器庫でした。内部はろくに照明も無くて薄暗いので、本当に古屋だったのだと思います。1フロア目が謎のしんどさだったり、床下に弾薬がぎっしり置かれていて、とても物騒です。
以上
以上でメッセージは全てです。妄想にお付き合いくださり本当にありがとうございました。