第四章
気がつくと朝焼けに染まる町が 眼下に広がった
行き当たりばったりな直弼であったが
町へたどり着くことができそうだった かに思えた
急に空に雨雲が立ち込め 豪雨とともに突風が吹き荒れだしたのだ
草木が大きくしなり 遠くで稲光が激しく瞬くのが見えた
直弼には容赦なく雨粒が叩きつけられ 痛みも感じるほどである
しかし
あばら屋に住んでいる直弼にとっては いつもと変わらぬ日常である
屋根の補修を怠り 雨粒が滝のように 直弼の布団に降り注ぐのである
直弼は 雨が嫌いだった
布団が濡れてカビが生えるからである
時には布団からキノコも生えてきたが
横着な直弼は 度々つまんでは生のまま食べていた
土砂を降り注いだような雨のなか 厠に籠るのが とても苦痛でしかたなかった
幸か不幸か 雨水が直弼の血化粧を綺麗に洗い流してくれた
臭いまではとれなかったが
元から臭かったので問題はなかった
さきほどの悪天候とはうってかわって
雲の切れ目から光の帯が町に降り注いでいる
「虹…か」
何気なしに口からでた その言葉に嫌悪感を覚えながら
町にむかって歩みを進るのであった