最終章

怪奇植物の触手を砕いた粉末と 蛙から搾り取った体液を懐に忍ばせた直弼は 市へ向かって猛然と駆け出した

「はぐぐう はぐがあああ」直弼は轟音で打ち鳴らされる鐘の音に呼応し 絶叫した

 

全身全霊で駆けてきた直弼だったが 城についた途端に門番に呼び止められた

市は既に参加者を締め切っていたのであった

「後生な…江戸から遥々ここまで歩いてきたというのに」

「すまないが俺にはどうしようもないんだ あの"黒腕"のアニキが言うことには逆らえねぇ 悪いがここは通せな…」

「そうか」

門番が喋り終える前に直弼はそう言い放ち 門番の首を後ろにねじり折った

「体はその"アニキ"とやらに逆らっているようだが」

平衡感覚 視界 血液 を全て一瞬にして断ち切られ ヨタヨタとふらつきながら顔から後ろにブッ倒れた

……

「俺の名は…直弼 第零号の参加者だ」

城内の受付に異質な雰囲気とともに威圧するかの如く恐ろしく腹の底に響く声で名乗りを上げた直弼だった

……

人を見ると暴力を振るわずにはいられない直弼の粗暴な態度も この城では通じるのだろうか

そして黒腕の男とはいったい……

かくしてこの奇妙な一夜は幕を開けることになったのであった

 

『直弼の憂鬱 第三部 死地』完