新章 壱

丑三つ時を告げる鐘が鳴り響き

闇夜に舞うコウモリが 城を黒く染め上げた

蠱毒皿を仕込み終わった直助は 殺人もやむなしといった表情で城の正面に立ち尽くしていた

そのモゴモゴと動く口の中には しびれ粉を練って飴状にしたものが入っている

 

木札には 闘鳴免斗 と血で殴り書かれていた

南蛮の言葉で 死を決する闘い の意味である

今の俺を止められるものは誰一人としていない

痺れ飴を飲み下すとあたりを見回した

誰もが血に飢え 金に飢え とにかく何かに飢えていた

飢餓は人から理性を剥ぎ 野生をむき出しにさせることは古来から伝わる通説である

直弼は受付から名簿帳を奪うと 自らの名前を写した

 

IE NAOSUKE 身分を偽っての出場であった

身を追われているからである 即ち 直弼は完全に理性を取り戻したのである

 

一通り名簿に目を通す直弼

『木偶の坊 空海』

『刀鍛冶の卍治郎』

『カギ十手の平兵』

『毒盛りのすみれ』

『人斬りの哲』

 

そこには 殺しの世界で暗躍する面々が

名を連ねていた