第十三章

カゴを開けると一匹の蛙(かわず)が その地獄のような毒沼の上に紫色の泡をこぼしながら立ち尽くしていた

目はとても血走り 背中からはムカデの牙が貫き飛び出ている

しかし 瀕死の状態にもかかわらず ゲコッゲコッとのどを膨らまし 漆黒に包まれた空気に鈍い鳴き声を響き渡らせていたのであった

 

これなら効果は期待できるだろうと 直弼は

もはや木の枝のように強張った手に 蛙の体表からにじみ出る体液を塗りたくり そして 苦痛から解放された喜びから狂ったように踊りはじめたのであった

その様子はキチガイという他なかった

横に無造作に転がる呉服屋の目からは 死してなお直弼への恐怖が感じ取れるほどのキチガイぶりであった