第十一章

麻たん五に気づかれまいと 枝にしがみついていた直弼だったが

撒き散らされた花粉を吸ったため 手足が麻痺し滑り落ちてしまった

……

「執拗なる殴打を加える也」

地面にぶつかる瞬間 今は亡き師の言葉を思いだしたが

この言葉には 特に意味はない

庭の木を近所の悪ガキにイタズラをされて 激怒した師が呟いたものである

 

直弼は幼いころ 一月だけ 近所の道場に通っていたことがあった

師は名前を 柳生坂 宗則男(やぎゆうざか むねのりお)という

剣道4段 書道8段 そろばん8段 どちらかといえば 教師体質の男であった

道場は みずから柳生流 と呼称し看板を掲げていたが

かの有名な柳生とはなにも関係のない ごく普通のものである

師を下した直弼は その日

名札を川に捨て 師の寝室を放火し 満足して帰路についたのであった

……

直弼は バキッと 派手な音をたてて 地面に激突した

肩から落下したのだが 痛みはない

これもしびれ粉を吸って 皮膚の感覚が鈍くなったからであった

これ以上吸い込んだら 確実に呼吸ができなくなるだろう

そう頭では分かっていたが もはや理性は 欲望にねじふせられていた

 

フトコロから手裏剣を取り出すと それを麻たん五にむかって投げつけ始める直弼

手裏剣は麻たん五の手足に 次々と突き刺さっていく

この手裏剣の鋭利な刃に当たった箇所が 深い傷になり緑色の体液が噴出した

出血と裂傷によるダメージで たん五の脚は 体とは逆方向をむき 崩れ落ちた

 

地面にごろりと転がった麻たん五をの顔面に いきおいよくかじりついた直弼は

溢れでる体液を 喉をならしながら飲み込んでいく

からだの震えは すでに止まっていた