第七章
カラスの鳴き声で目をさました直弼が見たものは
トリカブトの粉末を舐め 白眼をむき死んでいる 老婆と坂本であった
ふところから僅かに見えた 白い包みと白い粉
知らぬ者から見たら 希少な砂糖と見まがうほどに純白であったから
この程度の知能しか持たない人間にとっては お似合いの死に様なのだと
直弼は冷ややかな目を向けつつ 思った
それにしても
不覚という他になかった
長旅の疲労と 禁断症状が 直弼の反応を鈍らせていたのだ
かわりになる物が必要だったが
時間もなく 精神力がそこまで保ってくれる保証もない
直弼はこの日 生涯最大の危機を迎えた