第四章

走る速度が日増しに遅くなっていることに 危機感をおぼえながらも その歩みを止めることは叶わなかった

なぜなら

あと数日以内にカステラを食わなければ

全身の細胞が崩壊し 即座に死んでしまうからであった

少なくとも 直弼はそう信じていた

 

京はかつて 織田信長が拠点とし 日本の中心となり栄えた町である

しかし 信長が死に 徳川が幕府をとり 都を江戸に移したことにより

文化は廃れ もはや法など存在しないも同義といったありさまに 変貌してしまっていた

 

町の入り口にそびえたつ 巨大な門には

死体が互いに重なりあり 山のように積み上がっていた

カラスは死肉をついばまんと 群れになって上空を輪のように旋回し

生きている人は というと 足はキリギリスのように痩せ細り

生ける屍 といった形容がぴったり当てはまった

 

市はその門をくぐった先の 町の中央に鎮座した 巨大な廃城でとり行われるという

裏の住人によって開催されるために 情報は皆無に等しかった

それゆえに 自らの目で確かめてみるしかなかった

それが希望となり 直弼の腫れた足を ここまで動かしてきたのだ

 

直弼は足を引きずりながらも ようやく門にたどりついた

トリカブトは残りわずかしかない

「時間がない…」

直弼はもはや動かぬ足を叱咤しながら 門を潜っていった