第十章-革新の時-

直弼が懐からとりだしたのは

南蛮渡来の洋菓子 カステラであった

甘さにしても柔らかさにしても どれをとっても一級品であることは

直弼が驚異的な中毒に陥っていることからも 明らかであった

 

カステラを一口かじり

カステラを二口かじり

カステラを三口かじる頃には 討伐人は体勢を建て直していた

 

再び刀を構えた男は もう一度降りおろさんと 刀を高く掲げあげた

 

その時である

突然直弼が カステラを男の首もとに投げつけたのだ

討伐人は一瞬たじろいだかと 思いきや

その首は勢いよく横に跳ね 地面に叩きつけられた

 

体を横たえ動かなくなった 男の首もとには 野犬がかじりついていた

 

直弼は暇さえあれば カステラを野犬に与え 飼い慣らしていたのだが

それが 時に備えての行動なのかは だれも知るよしもない…