17.

1ヶ月後、ユートピア大統領から、オリンピック開催宣言がされた

その間にも、メキシコとの戦争だとか、いろいろ世の中では起きていたようだけど、今日は、特別な日だった

サムにとっても、エディにとっても

エディは、初めて人の道を歩んだ日

サムは、初めて子供を授かった日

二人の絆は親子のそれと相違ない、それ以上のものとなっていた

ジムの3階にはサムが借りている住み込み用のジム生のためのアパートがあったが、実際のところ住み込みで鍛えようなんて物好きはいなかったので、もっぱらエディ専用となっていた

エディの部屋には張り紙がしてあった

# 1. トレーニングをサボることなかれ

 2. よく食べること

 3. よく眠ること

 4. 人生を楽しむこと

 5. 上記を絶対に、守ること#

ベッドはふかふかだし、ドライヤーの風はすこし弱いけど、タオルがふかふかだし、人生楽しいから、言うことは守れてるな

少年が眠りにつく前にいつも思う、そして、いつもうんうんと頷いて、眠りにつく、そういう日がいつまでも続くのだと思っていた

 

「エディ、これから俺はスーパーに行ってくるけど、何か食べたいものはあるかい」

「コンソメのスープが飲みたいな、キャンベルのやつ」

贅沢を知らない子供だった

「それじゃあ、今日はトレーニングはおやすみ」

 

サムはケーキショップRed Velvet Cupcakeryで、ひそかにバースデーケーキの予約をとっていた

浮ついた気持ちでいた、アイスなんかを乗せたら喜ぶかなとか、クレープも一緒にやろうかなんかとか、考えていた

道を歩いていた

道中、昼間の演説を聞き、デモを起こそうと何か賑やかなことをしている物騒な連中を見かけた

 

ケーキショップにつくと、プレートになんて書こうか、考えていなかった事に気がついた

昔からサムは少しヌケているところがあって、少年との自己紹介が1週間も後の事になったのも、彼が天然であることが原因だったりした

『Happy Birthday To My Son』

シンプルに、不器用な彼なりの、メッセージだった

店員ににこやかに挨拶をされた後、店をあとにした

 

帰路の途中の交差点で赤信号を待っている時に、後ろになにやら気配を感じた

 

後頭部に、銃を突きつけられていた

両腕は、ケーキを持つために、塞がっていた

普段なら、苦もなくはね退けたであろう、その突き出された右手

普段なら、それが、特別な日でなかったなら、それが、今日でなかったなら

 

『Happy Birthday To My Son』

飾り箱から飛び出したケーキが地面にグシャリと潰れて落ちた

膝を折りたたんだサムの額から滴る血が、ケーキとビニール袋を赤く染め狂った