13.被虐の信徒

スポーツジムの門を叩いた少年は、幼い頃に両親から棄てられ、同じような年頃の子供たちがプレスクールに通っている時に、レストラン裏で生ゴミを漁っては大人たちに暴行を受けるような生活を送っていた

 

ある日、そう、確かクリスマスとかいう日だ

腐りかけのピザをダストビン(屋外用に使われるゴミ箱)からくすねようとしている時だった

「あのガキがまた来てやがる、ネズミが…」

裏手のドアから強面の店主が、バットを持ち少年に向かってヅカヅカと立ち寄ってきた

 

少年は、怯えた、急いで逃げようとした

だがその、華奢な身体は、栄養不足からクル病に罹っており、走り出した途端転んだ

「ハハ、転んでやがる、マヌケめ」

急いで立ち上がろうとして、また転んだ

おおきく振りかぶったバットの幹が、少年の脚に直撃した

少年は呻いて、生ゴミが散乱する路地裏を這いずった

またバットが振り下ろされる、少年はただうずくまり、腐ったピザを奪われないようにと、亀のように、痛みに耐えていた

これが、生きるということなのか、親も、友達も、オモチャも何も無い、ただ暴力だけなのか

少年の意識は次第に遠のいていった

 

身体中を腫らしながら目が覚めた

左のまぶたに血が溜まり、前がよく見えない

ここは何処だろう、辺りを見回した

スーツ姿の大人が、何人かいる

地響きを聞いた、そのあと、ギギッーと金切音がおおきく響いた

少年は駅のホームに捨てられていたのだ

 

少年は、惨めさに泣いた

いつもより殊更(ことさら)に殴られた

幸せになりたい、自分には、何もない

強くなりたい、強く、強く、強く、強く、強く

誰にも殴られたくない、強くなりたい

この世の全てが、憎い

この頃から、この名を与えられなかった少年は被虐の徒となった

 

いつか、世界中の大人を、力で押し潰してやる

少年の目に暗く澱んだドス黒い焔がやどった