11.脊髄反射氏、思考力を手に入れた途端反応に困り始める。

捨街…PM42:66 日に二度の日没が訪れる間近…

路地裏では純粋な暴力で争う二人の男がいた

マシラのごとく俊敏に動く才納に、覚醒した谷屋、共に暴力を生業としている者同士である

谷屋の叫びを聞き、脳天に血が上りきったC級ドラッグ常習者のジャンキーが飛び上がってきた

しかし対するは、マシラの弱点を、死の直前の走馬灯から探し出した男である

 

揺るぎない生への渇望が心に芽生えた男の拳は、薄氷を割るが如く、才納の頬骨を粉砕する

 

「オルミッッバルゲロン!」

「!!?」

才納が口から血の泡(あぶく)を訳のわからないことを口走る

「何を言ってるかわからないな…」

その瞬間、谷屋は一切の手加減、一切の命の重さそして、一切の人格を考慮していなかった

顎が粉砕し、ダラりとたれたその部位に、渾身のハイキックをお見舞いする

尚、この暴力は、格闘技ではなく、喧嘩術であることを留意してほしい

一見ハイキックに見えるが、ただ単に顎を蹴り飛ばしたかっただけである

 

そして、才納は沈黙した

 

PM42:99

二人の命を奪った人間、罪に問われるか?

答えは「否」

捨街に人権はない、尊厳もない

街に渦巻く淀んだ空気の中に充ちているのは、生きる意志と、殺す意志、それだけだった

 

この日、谷家は空に光を見る