XX.歴史の闇に葬られた人がいる

在日東スカンジナビア共和国大使館

屋上でデリバリーのスターバックス2、Lサイズ(エルサイズ)キリマンジャロ・モヘンジョダロを飲みながら、片耳にピアスを空けた男がつぶやいた

なんてことだ……やってしまった

キリマンジャロ・モヘンジョダロの苦い黒い汁を350mlほど飲み残し、屋上の縁から隣のビルのオフィスの、解放された窓に向かってトルネード送球

在りし日の記憶が蘇る

あれは暑い暑い夏の日だった

メンツユ・ゴクゴク・ジンバブエ(22)東スカンジナビア共和国出身で、大の日本オタクだ

日本敷地内に存在するアキハバラ共和国には、アイドルユニット【皆殺しの輪舞】【パニアプリーリ・ポペニャプニ】【土けむり五太夫】この三つを追っかけてしばしば偽造パスポートを提示してまであのアキハバラ共和国に入国したりする

中でも【土けむり五太夫】のメインボーカル【田中五蔵之助月光天女(たなかごぞうのすけあるてみす)】には、目が腐り落ち脳にウジがわく珍病、洪水により氾濫した汚染された河川などのタイムリーかつホットな話題と同じくらい熱を上げている

 

ブリューワー・ドブソン循環にみられる大気の循環と同じく、硫酸とザラメの混合物ワタパチとゴクゴク・ジンバブエとの密接な関係性は、気象と大気の関係と似ている

サワラの塩漬けとジャクソンカメレオンの塩漬けを片手にぶら下げながら、彼女の親元へと赴くゴクゴクにはもはや後悔の念はない

俺、この子と結婚する

彼女の名はショウユ・ビチャビチャ・ニューオリンズ(22)同郷のよしみであり、幼馴染であり、そして兄の仇である

ゴクゴクの兄ジョバジョバは学校のジャングルジムから飛び降りた際に、ショウユ・ビチャビチャ・ニューオリンズの父(タルタロス・インフェルノ(45))が運転する4トントラックに撥ねられ

 

死んだ

 

故郷に錦を飾るというが…ふふ、ついに俺も立派なイチモツぶら下げるに至ったかぁ

見当違いもはなはだしい自己流解釈である

地面にはエホバの祝福と書いたネオンの突き出し看板が置いてあり、そこから伸びまくったうねりまくりのコンセントのコードがアパートの壁に突き刺さり、電力を供給している

アパートの2階に緊張した面持ちながらも、どこかキリリと凜とした雰囲気を漂わせ、更に、さながらオフ会で会った予想外なチャラ男(真面目)といった雰囲気を漂わせる用意周到っぷりが、サワラの塩漬けといったアイテムによって増幅されている

「娘さんを下さい!! なんて言っちゃったりして!? 娘さんをいただきます! グフッグフッたまらんでゴザル(皆殺しの輪舞 サブMC【盛り上げ隊長キリングム→ン☆忠臣蔵】の決め台詞)」

「なんつったりなんかしてーーーーー!!」

テンションが何処か狂人じみている男が扉をノックする

「もしもォし、もしもォし、奥さんいるゥ? 娘さん貰っちゃうよォォ」

第一声からまごう事なきキチガイな言葉選び、これが俺流だと言わんばかりのWord choice.

「ハァイ、どなたかしら」

「どうも娘さんと付き合ってます、メンツユ・ゴクゴク・ジンバブエと物申ォス!!」

表札に書いてある杉山という象形文字がエホバの祝福最高幹部であるマスター・ノブオの名前だった事、目の前にいる醜悪な人間がマスター・ノブオの妻だった事、さらに、そこがビチャビチャ・ニューオリンズ(彼女)の家ではないという事、自分が致命的間違いを犯した事、この4点に気がついていたら今の自分はどれだけ幸せだったことか…

 

苦い黒い汁が仄かに胃酸を帯びてせり上がってくる

「何やってんだクルァ!! さっさと集金の時間だテメェ! コロスゾ!!」

エホバの祝福最高幹部であるマスター・ノブオの檄が飛ぶ

年会費1億円という法外な値段を請求され、払うあてがないですと答えるや否や、在日東スカンジナビア共和国大使館に行けばローンを組んでやる、と言われすごすごと今までの人生を切り捨てたのが1年前

今では立派な奴隷としての第二の人生を歩んでいた

 

おわり