7.スーパータニヤランド2 6つの金貨
少し湿って黒くなったコンクリートの壁に、吸い殻を押し付ける
両手をポケットに突っ込んだまま、風がぬるりと吹き抜けるビルの隙間から、男が出てきた
43分前
金髪のチャラい男が店内で怒鳴り散らす
鳴り響く音楽と鉄の玉の喧騒に負けず劣らずの大声だ
隣にいたロン毛の男はパチンコ台をこぶしで何度も叩く
「この詐欺師どもがァ…ふざけンじゃねーぞ」
クレーマー『だった』男は、女性店員の胸倉を掴み、思い切り顔に溶液と香草クサイボロボロの歯だらけの口を近づけ、軽く頭突きをする
拍子に彼女の眼鏡のフレームが数ミリ歪む、器物損害だ
この瞬間に男は犯罪者として世界に君臨する存在となった
奈津(なつ)は、心の中で悪態を吐くよりも先に、声を上げる
「谷屋クンっ!!」
「なんだァ? あんまちょーし乗ってっと殺すかんなァ!? オ゛ォ!?」(恐喝罪)
白目の中の黒目が重力を失ったようにピクピクと震える、もう、脳が半分以上溶け、危険を察知する能力がなくなっている
非常階段からガンガンと勢いよく駆け下りる革靴の音、白シャツのダラッとした雰囲気の男が、ぬうっと非常ドアを潜(くぐ)って顔を見せた
谷屋家哉(たにや いえかな) 住み込みでパチンコ屋で働いている若い男だ
あまり店内には姿を見せず、ビルの屋上でタバコをふかしながら空を見上げている事が多い
なぜ働いていられるかというと…
ある界隈では、チンパンジー並の知能を誇るとして有名である金髪チンピラが、自分のベルトにぶら下げられた長方形のアクセサリーをむしり取って谷屋に突きつける
バネ式で跳ね上がるジャックナイフであったが、(恐喝罪×2)同時に突き出された谷屋の手によって、顔面を鷲掴みにされ非常階段横の壁に思い切り叩きつけられ、鼻の骨を永久に損失したのは28歳混合ベンジン中毒者 フリーターの前科者かつ現役犯罪者の間借不通(まかり とおらず)である
間借は鮮血を紛失しながら床の上を転がりながら、呻いた
ロン毛は突然起こった出来事が頭の中で処理できず、間借を捨てて店の外へ逃げる
27歳重曹炭酸中毒者 才納零男(さいのう ゼロお)である
ポケットからはコカインのかわりに重曹がポロポロと零れ(こぼれ)落ち、同時に大切な思い出も失くしている事に気が付いているのであろうか? 答えは夕焼けに霞んで消えてしまった
谷屋が間借の顔面を掴み、引きずりながら才納の後を追うのであった