5.都営イルカ更生センターに集められたイルカ達、パフォーマンス中に水槽の隅で寝ているなど、観客からは大不評だが、「大人しくなった」などと飼育員からは概ね好評を得る

桃がケルベライト臨海を放った同時刻

南フランス アルデーシュ川の隣に位置する小国家、ポン=サン=テスプリの民達は天に光を見る

運河の水面は静かに揺れていたが、川底から黒く泡立つものが湧き上がっていた

 

ここ、フランスの領地は、古来から騎士に護られていたが、ポン=サン=テスプリはその騎士達の総本山であり、一際に強固に護られていた

その騎士達の鎧は黒く、手に持つ刃(やいば)は月光を浴び妖しく光る

そして、みな、「首」がない

騎士連盟達は、忠誠の誓いとして頭を落とし、騎士長に血の言葉を捧げるのだ

「フランスの大地に血が流れることはない、代わりに我らが、未来永劫、民々(たみだみ)の代わりに血を流し続けよう」

 

ポン=サン=テスプリ騎士連盟所属、フェルナンデスVIII世

この世に生を受け26年、血を捧げたのが12年前、一番の新米であるが、心の中の激情に駆られていた

210cmと騎士団の中では小柄ながらも、その左手にもつ3mの槍斧(ハルバード)が、彼の盟友であり、武器である

 

フェルナンデスは思った

ボルドーの赤よりも優しく、カオールの黒よりも憎み、ソーヴィニヨン・ブランの白よりも純粋に

大地を再び白く染めるたびに、私は征く

もはや時遅しとなれども必ず大地の穢れ(けがれ)は払われよう

我ら騎士団によって………

 

優しすぎる「首なし騎士」が民の事を想う

破滅へ向かう世界の変異を感じられるのは怪異に身を窶(やつ)したものだけであろう

なれば我は……怪異を打ち倒すのみ…

 

今、瞬きとともに領地が犯(おか)された

騎士達は毛並みの整った、純銀を纏いし戦馬に乗り、天へと駆け上がる

首からは黒い靄(もや)を煙のように揺らし、団長は、戦馬の嘶き(いななき)とともに轟礼を上げる

「犯すことならず、侵すことならず、奪われることならず、破壊(こわ)されることならず、悠久と後世のために、我らシュバリエー(騎士)は征く(ゆく)」

 

漆黒の騎士団が進軍する、敵を殲滅するために