歩道の真ん中に誰かの日記が落ちていた。
それを拾って読んだのがキリウ君だ。キリウ君には知り合いが多く、例えばその中には、腐った劇画原作者とか獣姦獣医とか、チェーン店の名ばかり店長とかがいた。それから、いつもネタに困ってる人種も何人かいたから、キリウ君は誰かにその日記を売ろうと考えた。
「ええ、他人の日記を元に話を書けって?」
「あんたの身の安全は俺が保障する。この中身をなんとか世に出してほしい。狂った社会に警鐘を鳴らすために」
キリウ君は知り合いの中から、プライドの無い作家に電話をかけてその話を持ちかけた。この日記には金じゃ買えない価値があるけど、金で売ってやらなくもない。そう言って、作家にまんまと日記を売り払った。
やがて、日記を元にした作品が出版されると、それを無視して、キリウ君は町に出た。そしてごった返す雑踏を議事録にまとめ上げ、新人賞に応募して、受賞して、世界を焼き払って神になった。そんな彼のデビュー作が聖書だ。