ループ・ザ・ループ……駅前広場でハイパーヨーヨーを構えて、そういうことを唱えてる女がいた。
「だからお前はダメなんだ。過去のしがらみにとらわれるのはいい加減に飽きろ」
近くのバスターミナルのベンチでエラそうに足組んで、彼女に言われのない渇を入れているのはキリウ君である。キリウ君は彼女の古い友人だった。色々やったりやられたりした仲だ。
落ち着け落ち着け、と自身の精神に女は呼びかけた。この技ばっかりは生まれてから今まで、どうしても緊張する。そして自己催眠による中枢神経の抑制が過去最高を記録すると、そのまま血を吐いて静かに昏倒してしまった。
「だからお前はダメなんだ」
女の取り落としたハイパーヨーヨーを拾って、悲しげにキリウ君はつぶやいた。そしてストリングを勢いよく引きちぎると、アスファルトに広がる彼女の血だまりでそいつを真っ赤に染めて、自分の両手首を縛ろうとした。
しかし、いくらキリウ君でも自分の手を自分で括るのは難しかった。ただでさえなんも挫折の無い人生だったからな。神が与えた試練とかそういうのだと思う。
どうやってもできなかったから、諦めたキリウ君はなんとか自分の左手の小指に赤黒いストリングを結んだ。そして女の右手の小指にもう一方を結んで、走り出した。
これが犬の散歩(ウォーク・ザ・ドッグ)だ! わかったか!