私がリボ総務を探して廃ビルの各部屋を虱潰しに回っていると、給湯室でユミンタと出くわした。
ユミンタは貴族である。クールビズを腐らせたようなファッションをしており、肝臓を悪くしたような顔にしょっちゅう凄絶な口角炎をのさばらせていた。寝不足のせいだろう。今日も、半開きの口の隅で、口角炎が血漿を固まらせてパリパリしていた。
なぜこんなところにいるのか問うてみても答えは無く、ただただ、彼はレンジで爆発させたタマゴを雑巾で伸ばしているだけであった。傍のシンクの底にはタマゴのカラがゴミのように散らばっている。ゴミだし。あと、ヒビの入った計量カップが置かれていて、そいつはびしょ濡れで曇っていた。
私は、できることなら彼にリボ総務を探すのを手伝ってもらいたかった。どうしたら手を貸してくれるのか尋ねた。
「足で良ければ、貸してやってもよろしい」
ようやく顔を上げたユミンタはラバーソールのヒールを鳴らして、高圧的な態度で私に足を向けてきた。致命的なダメージジーンズみたいなスラックスから突き出たふくらはぎには、たくさんのアブラムシがまとわりついていた。
誰かが笑った。私は礼を言って、ユミンタの服を引きちぎった。
「セっセクハラじゃあああああああああああ」
彼は大声を上げて後ずさった。あまりに口を大きく開けるもんだから、口角炎が一気に裂けて痛そうだった。
「黙れゴミうるせぇっ」
逃げようとするユミンタをナショナリズムでエモーショナルに殴打して倒すと、私はマウントポジションを取って彼の貴族シャツを剥いだ。そして彼の腐った腹部に手を突っ込んで、ヌカ床みたいにかき回して赤黒いレバーを取り出した。ヌカ床ってなに?
「見てゴミ、お前の腹すごい黒い」
「レバー生食禁止!」
「死ね」
次に私は自分のノドの奥に手を突っ込んで、今朝食べた寄生虫のキリウ君を引っ張り出した。キリウ君は寄生虫である。色んな液体でぬるぬるベタベタずるベシャの彼は虫の息だったが、どうせ虫だから平気だろうと私は思った。もちろんキリウ君は狸寝入りをしていたので、頭を叩いて起こした。
しかしキリウ君はカトンボのように細い手足をだらんとさせて、ずるベシャの空色の髪で半分くらい隠れっぱなしの充血した目をこすることもしないでいたので、私は彼の口をこじ開けてユミンタのレバー塊をねじ込んだ。できるだけ力任せに押し込んだ。
するとようやくキリウ君は咳き込む程度に動き、赤黒い内臓を拒否した。
「ユミンタのレバーはまずいって」
私はユミンタに報告したが、肝心の彼は裸体を隠すことに一生懸命で、キリウ君のことなど見ていなかった。いよいよキレた私は、ライターでユミンタのモジャモジャ髪に火をつけた。
喚き声を散らしてのたうち回るユミンタをよそに、横になったままのずるベシャキリウ君がすごく気持ち悪そうにしていた。しているように見えるだけだ! 彼はああ見えて虫ですので。騙されるなよ虫に。