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7.ブラックデビル

 いつからかキリウ少年にしょっちゅうタバコのおつかいを頼む、兼業借金取りのルヅという男がいる。そんなものキリウが引き受けなくとも、ニコチン中毒のその男は放っておけば自分でタバコを買いに行くので、最近のキリウはたいていそれをすっぽかしていた。なのでルヅも、口ではともかく、実際はすでに彼をあてにはしていない。

 しかしその日は湿度がちょうどよかったのか、珍しくキリウがタバコを買ってきた! それに驚いたルヅは一応喜んだが、いったい何を企んでいるのかとゲスの勘繰り全開でネチネチと悪態をついてしまったために、キリウから根性焼きをくらった。そして灰皿を炎上させられた。

 人間不信が募り、にわか灰皿テロリストと化したキリウ。彼が、すでに中身が半分程度にまで減ったガソリンのポリタンクを片手にギラついた目で喫煙所を探していると、なんでも屋の前でユコと出会った。なんでも屋とは、毒にも薬にもならない雑誌とかを売っている店のことだが。

「キリウも八つ当たりとかするの」

 八つ当たりが好きなユコは、キレ気味のキリウの話を聞いてそう言った。

「ガソリン高かった。ガソリン花の柱頭の醸成が悪化とか」

「大丈夫だよ、キリウ」

 何が大丈夫なのかは知らないが、キリウはルヅからタバコの代金を受け取っていないことを思い出した。いつもそうだった。そして、それならもっと燃やしておけばよかったと唐突に後悔し始めた。ユコは相槌を打ちながら、けれど真摯に彼の話に耳を傾けながら、買ってきたばかりの雑誌のクロスワードパズルを解いていた。立ったまま。

「今からでも請求すればいいじゃない」

「いや、もう、玄関にスプレーで、セクハラ文言を書く……」

「……」

 そういう流れで二人はショッピングへとしゃれこんだ。タバコ代以上の代金を支払ってスプレー缶を買い漁るキリウを見て、終始ユコは面白がっていた。