21.x=61

イーストサイドから登場するのは…リザーバーだ! 異国の黒衣を纏った、灰に埋もれた都市、中華人民共和国唯一の生き残り、龍騎(ドラグーン)! 185cm!! 巨漢のチャイニーズだ!

その出自は謎! ファイトスタイル不明! ただ一つわかるのは……ヤツは、『凶悪』!!

 

『ワアァーー』

観客は熱り(いきり)立ってスタジアムの床を踏み、リングの魔人を鼓舞するように狂熱の叫び声をあげる

 

対してウエストサイド…ワシントン州唯一のボクシングジム出身、師匠はサミュエル・サウサー、エドガー・サウサーだ!! ガウンに身をまとっての登場だ! その目は陰になって見えないが、その目は…171cmの小柄なボクサーとは思えないほどに、炎に燃え狂っている!

 

(相手はボクサーではない…? これは…そうか、見世物か)

コーナーポストに黒衣を投げ掛けたドラグーンは、その首筋から腰まで大きな黒い龍の刺青が彫られていた

エディのセコンドはいない、ヤツのセコンドは、ニューヨークのゴロツキ上がりのミッシェル・エレファント

(何をしてもいい…? 何を……)

実況が遠くなる、叫声(きょうせい)が遠くなる、キャンバスの光が遠くなる

(そうだ…守るんだ)

高い音を鳴らしてゴングの鐘が鳴り響く

 

さあ! 1ラウンド目のォーー開始だぁ! 観客のみなさん、どーぞご拝見をぉ!!

 

前を向くと視界から中国人が消えていた

振り向くと、ドラグーンが、エディの頭を指抜きグローブで掴もうとしていた

(後ろに立つ…後ろに立って…何をするんだ?)

ドラグーンは、およそボクシングとは掛け離れたグローブを装備している

指抜きであるためにナックルでの殴打、皮膚のカットを容易とする、普通なら反則即失格、退場であるが、ここは『見世物小屋』である

巨大な手がエディの美しいブロンドの髪を鷲掴みにしようとする

逆手、左手は既にナックルアローの構えでエディの後頭部に狙いを定めている

これを食らったら一発KOは免れない、パワーファイターの残虐性を象徴する無慈悲な一撃

(後ろに立ったら……)

グイ、と髪を引き寄せられる

(お父さんみたいに…)

豪腕がエディの顔面に猛烈な勢いで迫ってくる

(殺すんだろう…? お前も…ぼくを…殺すんだろう……?)

 

『グシャッ』

腐った野菜が弾ける音がした