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思い出

 昔、キリウ君のうちでスーパーボール拾いました。でもボクは何でも口に入れちゃう年頃だったから、そのまま口に放り込んで噛んでました。そしたらキリウ君にバレちゃって、怒られるかと思ったんですけど、別に怒られませんでした。

「どうせ噛むなら、もっと人生のためになるものを噛めよ」

 そう言ってキリウ君が押入れの奥から引っ張り出してきた古い箱の中には、誰かのヘソの緒が入ってました。本当にこれを噛んでいいのか、尋ねるより速く、キリウ君はそいつをボクの口に突っ込んできました。

 どうだ! うまいだろ!? 勢い余って床に押し倒されたボクの上で、キリウ君はマウントポジションを取って目を血走らせながら叫んでいました。ボクは干からびたヘソの緒を噛みながら、ああ生きるってこういうことなんだなって思いました。うまくもまずくもなかった……。

 その時の話をすると、キリウ君は恥ずかしそうな顔をしてうつむいてしまいます。忘れたい思い出なのでしょう。