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フェイタルフェイト

 なんど姓名診断をやり直しても『典型的な死にたがり』『布団の上では死ねない』以外の結果にならない……。

 何かがおかしいと確信したキリウ君は、しかるべき処に赴いて、しかるべき審判を受けることにした。正確には彼自身の運命がそう仕向けたのだが。

「雑な調査の結果、ややハードコアな事実が判明した」

「メロコアじゃなくて?」

 ヤクザ医師は、キリウ君の的はずれな質問に怪訝な顔をした。ならびに「むしろエモだろう」と一蹴した。

「お前はジパング市の政策で生み出されたデザイナーベビーである可能性が高い」

 医師がモニターに映し出した画像は、当時の実験記録と思しきもののスキャンデータだった。黒塗り混じりのびっしりと並んだ荒い文字を速読で飲み込んだキリウ君は、嫌悪に満ちた声を上げた。

「サンプル13『いかなる占いも最悪の結果になる人間』って?」

「ああ。姓名だけでなく、出生地・生年月日・人相・手相・ほくろの位置・血液型、果ては好きな動物、好きなサッカーチーム、あみだくじのどこを選ぶかさえもな」

「嘘つけ!」

 勢いよく椅子から立ち上がり、上着をひっつかんで部屋を飛び出したキリウ君に、医師の呼び止める声は届かなかった。ドアの前を塞ぐように立っていた構成員をすっ転ばし(『マッピー』では普通)、トランポリンをぶち破り(『マッピー』では普通)、キリウ君は走った。

 気がつくとキリウ君は中庭にいた。息を切らして、ふと彼は、花壇から八重咲きの赤い花を手に取った。無意識に選んだそれは、この場所で一番花びらが多いものだった。彼はその花びらを一枚ずつむしり始めた。

 この世界は俺のことを、

 好き、嫌い、好き、嫌い、

 最後に「嫌い」と唱えたとき、キリウ君は惨めな姿になった残骸を取り落とした。人工池の水面に散ったたくさんの花びらを見て、次に四角い空を見上げた。見捨てられたような気持ちになったその時、医師の怒鳴り声が降ってきて、そして決めた。

 他のサンプルを……探しに行こう。

 正確には彼自身の運命がそう仕向けたのだが。