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非実在電波少年キリウ君を捜しています

 7E1年8月20日の朝、レレノイドが目覚めると、キリウ君が隣に居らんかったよ。

 借金取りのアルバイトに行ったのだろうか。それとも、シューアイスをシューとアイスに分ける政治活動の方だろうか。イカレポンチのキリウ君にはとかく出かける用事が多い。終わらない歌を歌っているのではないかというくらいに。だからレレノイドはそれを気にしなかった。

 しかし、その日ついに、キリウ君は1ミリも帰ってきませんでした。

 心配になったレレノイドは、知り合いを順番にあたってみることにした。そして、何かがおかしいことに気づいた。

「誰?」

 どいつもこいつもキリウ君の行方どころかキリウ君のことを知らないようで(使えねぇ~~)。レレノイドがどんなに説明しても、キリウ君の元恋人から職場の上司まで、誰もキリウ君のキの字も理解できないらしい。脳がミジンコに置換されたかのように惚けきった彼らのアホづらからも、まんざら冗談ではなさそうだ。

 レレノイドは警察に捜索願いを出すことにした。しかし、キリウ君の家族でも身近な人間でもペットでもないレレノイドの願いは、拒まれた。

 それどころか、公的機関に暴力を背景にした問い合わせを繰り返し、郵便局から強盗したお金で三十三人の探偵を生贄に捧げて捜索するうちに、キリウ君の住民票がこの街に無いことが判明。それどころか戸籍がジパング市に無いことすら判明。キリウ君の爪をDNA鑑定してもらったら、ハムスターのものだと判明。

 もはやタンポポでも吹いていた方がマシでわ?

 今日もレレノイドはチラシを貼ってまわっています。

『非実在電波少年キリウ君を捜しています。
 ミョウバン漬けにして音感を死滅させる実験をして以来、行方が分からなくなっています。
 年齢は十四。背丈は女の子にしては高いくらい。
 夏の青空を閉じ込めたような髪の毛、ハツカネズミのような赤い瞳。
 コーヒーをかけても泣かない。お菓子をあげると泣き喚く。
 一目見て、恋をしている人間であることがわかる。
 洗濯バサミを持って逃げました。
 今もこの街のどこかで彼は私たちを見守っています。』

 やがて、駅前の自転車置き場にキリウ君が乗り捨てられていたという目撃条件が寄せられたので、レレノイドが行ってみると、黒い油まみれのチェーンで吊り下げられたキリウ君の靴がありました。キリウ君なんて実在しないのに。