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ダルマ落とし

 俺もずいぶんダルマ落としがうまくなったよ

 乾いた地面に這いつくばって吾輩の腹に水平にトンカチを当てながら、キリウ君がそう言った気がした

 コンコンと何度か小突いたのち力を込めて勢いよくストライク

 すっ飛ぶ吾輩の腹、同時に硬質な音を立てて粉と砕け散る吾輩の腹

 ぐらつく吾輩の頭、中身を繋ぐもののない首

 思い出すのは夏の午後

「いつの話をしてんだよ」

 そうか えっ 来年の干支何だっけ!?

「ナメクジ」

 我々が雑木林の廃屋から平行次元につながる扉を開いて、かれこれ十年か

 眼球を下に向けると、吾輩の足首に鳩尾から上の全てが乗っている様が確認できた

 スタイル最悪

 だが全ては積み上げることが下手くそな吾輩の性分に起因するのだと思う、この無益な円盤は一つ一つに絶望が染み込んで磁石のように重くなったので、時々心が折れそうになる、そしてそれをサイコロ任せでキリウ君にトンカチで叩かせてきたのは、吾輩なのだから

 積み上げてきたものを壊すことにかけては実に慈悲のない少年だ

 それとも吾輩がキリウ君にやらせてきたと思っているだけで、本当はキリウ君の方から吾輩にトンカチを向けてきたのかもしれないが

 それとも吾輩がキリウ君にやられたと思っているだけで、本当は吾輩がキリウ君に命じてトンカチを握らせているのかもしれないが

 それとも吾輩がキリウ君を実在のものと思っているだけで、本当は吾輩がキリウ君なのかもしれないが

 それとも吾輩が自分をキリウ君なのだと思い込んでいるだけで、本当はキリウ君が別の場所に実在しているのかもしれないが

 全てが終わったら探しに行こう

 ――毒ガスに満ちた大地で今もウニョウニョ自生してるはずのキリウ君を

 ところでキリウ君、どうして吾輩のスネとかヒザとかは全部飛ばすくせに一番下の靴だけは残してあるんだい?

「俺があげた靴だから!」

 ああそうだったね……

 彼の笑顔の↑では赤黒い空が稲妻を飛ばしていた。