68.カレイドスコープの中の電波塔
これ以上大切なものを失わないために、神様は電波塔をつくられました。
その時すでに神様は、百億の地獄を渡り歩く旅の準備を終えていました。
神様が七輪でホットケーキを焼きながら片手間につくったせいで、見た目はひどいです。最低限、三角錐の形をした枠の内側は、太さも長さも不規則な骨がしっちゃかめっちゃかに走って埋めています。
しかし歴史ある箱庭ですから、肝心の大地ももはや継ぎ足しを繰り返して、枝葉が全部色違いになってるみたいなものなので、あまり気にしなくていいのかもしれません。
必要なのは、そんなカオスを上から抑えつけられるだけの薬です。
電波塔は、知的生命体がヘンなことをしないように見張っています。
電波塔は、おかしな入出力を防ぐシグナルを発しています。
電波塔は、神様のセカイが壊れないように守っています。
電波塔に抱かれて皆生きているのです。
電波塔に抱かれなかったら融けて死ぬ。
されど皆電波塔に抱かれて死んでゆくのです。
電波塔は、抱かれたい男ランキング(83AC)ナンバーワンに輝いたことがあります。
電波塔は、三大栄養素の一つです(炭水化物・タンパク質・電波塔)。
成人男性が一日に必要な電波塔は約三百キロバイトと言われています。
電波塔は……。
電波塔は……。
鬼を殺し続けなければならない地獄に落ちた神様は、魔法使いの『テスト』が消えてしまったことに気付きませんでした。
自律した存在であるテストが一人でうろつくことは普通ですし、それを望んだのは神様だったのですが、問題は、その日ついにテストが帰ってこなくなったということです。
だけど脳みそにチーズオムレツを詰められる地獄に落ちた神様は、テストが帰ってこないことに気付きませんでした。
テストは神様に忘れられました。
テストは悪魔にさらわれたのです。
テストの身体をバラバラに引き裂いた悪魔は、中から転がり出てきたキラキラしたものを見て、嬉しそうに叫んだといいます。
なにこれ!
悪魔は、残ったゴミを神様にバレないよう別のものに変えて、世界の果てに捨てました。
神様はもうトスゾ暴虐のサヨッテンにケロチする地獄に落ちているというのに。
そんなキラキラ光る大事な宝物を、悪魔は一度だけコピーして、一人の少年に与えてあげたといわれています。神様が銀行の金庫でトマトジュースを飲む地獄に落ちていた頃の話です。