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67.子供はイジメが大好きなんだから

 酔っぱらったままネット掲示板を荒らしてたら眠っていた。近隣のいくつかの街のイジメられっ子たちが集うコミュニティに、病気みたいに貼りつけ回った罵詈雑言が、今も光っていた。

 ――ルヅという男はこの街があまり好きではなかった。無法地帯であること以外は、あまりいいところが無いと思っていた。何より、ことごとく情緒の欠落した子供たちに嫌気がさしていたからだ。この街の、生まれた瞬間からどこか諦めきったような顔をしたガキどもは、イジメがいがなくてつまらない。

 殴られたら殴り返すか、死ぬまで殴られ続けるか、殴られる前に刺して来るか。そんなサッパリしたセカイはつまらなかった。だからルヅは、モバイル端末の向こうの子供たちのウジウジしたところが大嫌いで、ルヅの言葉ひとつで傷つくところが大好きだった。

 どこかの悪魔ほどではないが、ルヅも色々なことで食ってきた人間だ。どこかの悪魔は怪しい仕事を好んだようだが、ルヅは人間の醜さみたいなのが感じられる仕事を好んだ。

 特に向いていたのは、探偵とヤクザの中間くらいの何でも屋だったように本人は思っている。しかし実際には、「そこまでやるなんて思ってなかった」「社会的に殺してほしいとまでは言ってない」「あんたの親はかわいそう」「軒下に吊るしてやる」「脊髄まるごとサイコ野郎」等クレームをつけられ、サービスとは何ぞやと悩むことも多かったが。

 あの頃は若かった。

 そういうわけで、やりすぎても文句を言われない殺し屋を副業として始めたのは、いつのことだろう。当初はどう客を探したものか分からなくて、しばらくはほぼ借金取り専業でコネ作りに奔走していたりもしたが、今では放っておいても依頼が来る。近頃はムシャクシャして、タンバリンとかゲームコーナーのメダルで支払を受けることすら……。

 泣いても笑ってもこれまでだ。

 借協からの業務連絡電話を、彼はワンコールで取った。聴いてないけど、ハイわかりましたと返事して切る。

 おととい借金のカタに『客』から奪ってきて、床に投げっぱなしにしてた改造ガスガンを拾って窓開けて、イヤになるくらいの青空にイヤになる自分がイヤになる、ならない、眩しい。元気なガキがうるさい向かいの公園に銃身を向けて、全弾撃ち尽くしたら、最初にこちらを見た奴の顔面めがけて銃を投げつけ――よう。

 すぐさま実行したところ、一発目で弾が詰まった。そのまま無言で銃を投げ落とした。

 そういや新しいバイク買っちゃったよ。置くとこ無いんだけど。

 また電話が鳴ったので、彼はワンコールで取った。今度は人殺しみたいなことを頼まれたので、しっかり聴いてメモをとって予定を確認して返事して、きちんと挨拶して切る。

 や……。

 やめらんねえ。笑いが止まらん。

 なぜ、どいつもこいつも他人に手を汚させるのか。こんな方法を取らざるをえなくなってしまうほどに、深刻なバカどもなのか。自分でやらないチキンども。人が死んでもなんとも思わんゴミ。ひとでなし。情けを持たないクズ。血液ドロドロのカスども。

 うだつの上がらない債権者ともども、いっぺん死んだ方がいいと思う。身の丈に合わないことをしているという点ではどちらも同様に救えないのだから、特に債権者には死んででも金を作って支払ってほしいと思うし、一家総出で身売りなんてかわいそうだから、全員死んだ方がいいと思う。カス因子が遺伝した子供も殺した方がいいし、そんなガキはどうせイジメ殺されるだろうし、自我が生まれる前に現金化して、金を返してほしいと思う。

 そりゃあオレもひとつやふたつは商売をやろうとしてきた人間だし、踏み倒した借金のふたつみっつはあるけど、オレは借金取りなんてゴミ共に債権を引き渡される前に自分で何とかしたよ。爆弾の作り方とか勉強して。

 つまんない。

 そんなことはどうでもいい。

 今朝方キリウ少年がポストを見ると、どうでもいい広告が死ぬほど投函されていた。どうでもよすぎて紙飛行機をたくさん作った。それをビルの屋上からばら撒いたら、オーナーに怒られるかと思ったら、そいつはエレベーターのカゴの下で死んでいた。一見すると腹上死にしか見えないのだけど、本当は……。