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123.獄門!日刊虚言プランター

 ……本日の『トマト式ぶちまけ人生相談』、続きます。

 次のメッセージは、住所不定、ラジオネーム『バッタ野郎』さん。例によって永遠の十四歳。いつもありがとうございまーす。えー、『E.A.さん、目ん玉さん、こんにちは』。こんちはー。

「こんにちはー」

 ↑アシスタントの目ん玉な! で……『いつも楽しく聴いてます。ぼくは最近、生まれて初めて海を見ました。それも、以前にこの番組のノイズアレンジで知った、味川しおみさんの《いとしらず夢の浜》の舞台になった海です。けれどぼくが行ったときには、砂浜はコンクリートになっていて、核の傘も見当たりませんでした。今、海上列車を待ってる間、灰色の海を眺めながらモヤモヤした気持ちでこれを書いています。E.A.さんたちは、海によく行きますか? 何色でしたか?』。

 味川しおみって……ああッッッ、また懐かしい名前を出してきたな! 何十年前だ? あの人ほんとにポップなのに、なぜか地下闘技場でやたら流行ったっていう。

 あのですね、知らない方向けに説明しておくと、この番組、週替わりでサンプリング課題を出してた時期があったんスよ。リスペクトとインスパイアの限界を探るというか、リスナーさん投稿で数多くの伝説が生み出されたコーナーだったんだけど。

 残念ながらオレを含め三時間越えの大作傾向が過ぎてきたり、投稿があらかた全部ナードコアになったあたりで、なんだっけ。

「生物多様性だぜ」

 そうそれ。生物多様性の観点から、色々と問題が重なって、あらゆる意味で終わってしまいました。社会的に死にました。『あじしおノイズ』はそこで生み出された全盛期の伝説のひとつで、味川さんの『いとしらず夢の浜』を課題曲にした時に投稿された……ま、ちょっと音源ひっくり返してみるぜ。残ってたら今度かけまーす。

「お楽しみにー!」

 で、核兵器だっけ。あぁ海だっけ。あんまり変わんねーな。

 海かぁ、道すがら通ったことは何度もあるけど、オレは大地を愛する安直な植物だからな。塩水はしょっぱくて生理的に無理だし、潮風に当たってるだけでハゲそうになる。目ん玉はどう?

「オレはえーとえーと、毛布を愛する優しいモノグロだから、磯であめふらしつついてるぶんには楽しいけど……。水がしょっぱくて目に染みるし、砂粒が関節に挟まるから、実はオレもあんまり得意じゃないんだぜ」

 ふぅん、どおりでここのメンツで海に行っても盛り上がらないのな。オレが言うのもなんだけど、あんなにデカい水たまりと無限の砂を見れば、スゲー盛り上がってもいい気がするんだけどな。理由もなく。

 しかしそもそも『塩対応』『塩試合』『塩漬け』、オレたちは暗に塩ってもんに厳しいイメージを持ってるらしい。何より海でおぼれると死ぬ。結局のところ、がれきから生まれたオレたちは海とは相容れないというのが、答えなのかもしれない。そこんところを分からずに無理に付き合おうとするから、コンクリートで固めてしまうのかもな。

 そしてオレの意見を言わせてもらうとだ、海は青いんだ。空が青いからだ! だから夜は黒いんだ、言わせんな。

 海の色を変えたければ空の色を変えればいい。空の色を変えるには心の色を変えればいい。心の色を変えるには生まれ変わればいい。また来世で会おうな、誰にも愛されないかわいそうなお前ら。

「Eちゃん、食紅をぶちむんじゃダメなんだぜ?」

 悪くはねーけどロマンがねーよ。まあ、オレだって本音を言えば、何もかも爆破して終わらせたい気分の時もあるけどさ。知ってるか? 爆弾って、虚飾にまみれた自分をもう一つの人格でもって壊せるんだぜ。最高だろ。

 もっとも空と海の色が違ったなら、こんな精神論は何の意味も無いぜ。男には、マジで食紅をガン積みしてでも戦わなければならない時もある。海は青色だ。青くないならお前が染めろ! この世の誰も見てなくてもオレが見ててやんよ、気合と根性と雰囲気で。

 あと、核の傘より月の暈だぜ! 何一つ護れないけど見ていてキレイだからな。

 そんなところで……本日の『トマト式ぶちまけ人生相談』、ならびに日刊虚言プランターの放送は以上です。トマトみたいに真っ赤になれることを夢見て、明日も永遠に彷徨っていきましょう。そいじゃあな。

「ばいばーい」