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116.まぶしい井戸の底

 まぶしい井戸の底へようこそ。

 アナタも彼女……コランダミーの新しいオカルトグッズコレクションなのかしら? ワタシは瓦割り人形のアルメロニカ。訳あってみんなからはゴラッソと呼ばれてるわ。でも、特技は名前の通り瓦を割ること。よろしくね。

 ここは、実在しないようで実在する彼女の思い出で埋め尽くされてる。それでいて、意味があるものは一つも無いのよ。おもしろいでしょ。まぁ、アナタにジョークが通じるとは思わないけど。

 本日の十三使途を紹介してあげるわ。

【1】呪いの鍵盤ハーモニカ。誰もいない部屋に置いておくと、夜中に勝手に鳴りだすのよ。再現性が高いから、眠れない寂しい夜にはうってつけ。

【2】全自動刀狩機。起動すると半径二十メートル以内の人間に対して、自動で身分を判定したうえで強力な電磁石で武器を吸着するわ。営業と現場のコミュニケーションに難があったために、木製の弓などに対応していない設計になってしまったようね。消費電力も弱で五千ワット、強で八千ワットのモンスターマシンよ。

【3】ハチミツまみれのおろし金。ハチミツ大根が簡単に作れる台所の便利グッズね、ワタシはおろさない方が好きだけど。チタニウムのインゴット二本とハチミツ六瓶でクラフトできるわ。回復力は微妙だけどコスパは終盤まで他に引けをとらないわよ。

【4】負けると死ぬトレーディングカードゲームのデッキふたつ。コランダミーは昔は三つ持っていたけど、一つは邪悪なカード組織に奪われてしまったの。でもタチの悪いフルバーンだったから、私はそれでよかったと思うわ。

【5】かわいい裁縫セット。全人類の身だしなみの決定版! 古傷が開いて腸が飛び出しても、頭を撃ち抜かれて脳みそを撒き散らしても、これでバッチリよ。

【6】錆の結晶。コランダミーの昔の友達が、錆びきった釘やボルトをたくさん集めて作ったものらしいわ。これ以上錆が溶けないほど錆を溶かした液体の中に錆の粒を吊るして、少しずつ液体を蒸発させていけば出来上がり。傍目には汚くてつまらなくて使い道が無いものでも、誰かのかけがえのない、取り戻せない時間が詰まってるのね。

【7】鎌。共産主義の国から勝手に持ってきたやつね。詳しいことは伏せるわ。

【8】サイコロ型の黒い石がついたペンデュラム。かわいいけど、これ自体には何の力も無いわ。これを信じる彼女の空っぽの心に力が宿るのかもしれない。ただしエネルギー保存の法則に反さない範囲内でね。そういうのって案外お腹がすくのよ。

【9】砂が詰まった水風船。どうなのかしら? こうも窮屈でも、自分に輪郭が無ければ苦しくないのかしら。こんな広い場所でまったり過ごしてるばかりのワタシには、想像もできないわ。だけど四角いスイカだって、丸い自分を知ったうえで四角くなりたくて箱に入ったのなら幸せだと思わない? ここは広すぎて、正直なところ将来のビジョンが無いもの。

【10】すごく気持ち悪いトケイソウの押し花。こないだ、コランダミーがゴミ屋敷の軒先に生えてるのを勝手にちぎってきて作ったやつね。彼女は少し手癖が悪いところがあるうえ、ああ見えて、悪いことだと分かっててやってるのよ。そうじゃなかったら、キリウ君とうまくやっていけるわけないわ。どうせ、これを挟んでた本も盗品よ。

【11】色が変わるルービックキューブ。ざまあみろだわ。

【12】トンカチ。共産主義の残りカスね。

【13】見ての通りよ。見えないの? 実はワタシにも見えないのよ。何かあるらしいんだけど。

 今のところはこんな感じね。そこそこの頻度で出入りがあるから、肩ひじ張らずに気楽にしていってちょうだい。それにみんな、意味は無いけどとても手入れが行き届いていて、キレイに保管されてるでしょ。彼女がいつも丁寧にみがいてくれるのよ。アナタもきっと気に入ると思うわ。

 なんていうか彼女の存在って、味付きストローで何を飲むかという話に似てるのよね。泥団子に突き刺したり、ガソリンすすっても意味が無いでしょ……。

 ……ちょっとアナタ、聞いてるの? えらくマイペースな奴が来たものね。いいわよ、色んなモノが分け隔てなく転がってるのが、ここのいいところなんだから……って、イタッ! いたた! あのねえ、とんがった手足をぶらさげてウロウロ飛び回られると……。

 あっ。