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漫画『鉄コン筋クリート』の作中年代を無理やり推定

※この記事にはネタバレが含まれているかもしれません。

 松本大洋氏の漫画鉄コン筋クリートの作中年代を無理やり推定します。鉄コンは単行本が全3巻あり、第1巻の初版は1994年です。

  1. 作中から推測できる時期
  2. 作中から推測できる年代
  3. 青い春から推測できる年代
  4. 21世紀の子供たち

本文中の画像は、小学館の鉄コン筋クリートおよび青い春 松本大洋短編集(新装版) 単行本から、写真撮影にて引用しております。

作中から推測できる時期

 年代の前に、時期について書いておきます。このあと年代を推測するのですが、その前提として、エピローグを除いた物語の最初から最後までが、ある年の春~翌年始め (1年以内の出来事) に収まっているものとするからです。

 この憶測の材料は以下の通りです。

※大前提
松本大洋氏の漫画をいくつか読んだうえで、季節の描写は信頼できるとしています。
第1-2話
春っぽい。クロシロとも長袖かつ上着を着用しているが、半袖の修学旅行生や、上半身裸のモブもいる。
第3話
やや夏っぽい。冒頭で水を浴びたシロが寒がっていたが、あとで普通にアイスを食べている。クロが袖なしの胴付き長靴を着ている。
第7-8話
8-9月くらい? クロシロとも半袖。チョコラの実家からリンゴが送られてくる (品種にもよるがおおむね8月の後半以降か)。また、リーリー鳴くコオロギらしき虫が強調されている。
第11話
9月くらい? 冷凍ミカンが出てくる。クロが、夜の空気のにおいで「夏も終わるな」と言う。
第12話
木村の女が妊娠してるという話が出てくる。詳しくは後述の『メモ: 木村の女の出産予定日』参照。
第15話
9-10月くらい? シロが長袖だが、クロは袖なし。ソフトクリームが出てくる。
第19-21話
10-11月くらい? 夏以降で初めてクロシロとも長袖になる。冬めいたセリフ (クロの「シロは冬が嫌いでね。冬になるとよく泣くよ」、沢田の「冬って好きですか? 藤村さん」) が出てくる。
第22話
12月。病院のカレンダーに『12月』と書いてある [画像1]。クロの服装が目に見えてもこもこ。
第23話
12-1月くらい? 1コマ目に『冬』の大文字。背景の工事現場が、第17話でネズミが言っていた「この劇場も年末には子供の城2号店になるって話だしな」のものだとすれば、まだ完成していない。クロの髪が、前話から少なくとも1か月ぶんは伸びているように見える。
第25話
女の出産予定日を尋ねられた木村が「4月の頭です」と答えている。『来年の』と言わないということは、やはり年が明けている? 深読みしすぎかも。
第26-27話
1-2月くらい? 息が白く、みんなかなり厚着をしている。この夜から、クロが手足とも隠れる服装になり、更に寒々しく感じる。
第28話
前話から少し時間が経過しているはず。前話でクロがつけた、蝶の右目の傷が治っている。クロの状態も悪化している。
第30-32話
前話から5日後経過。1日の中の出来事。シロのリンゴの芽が出る……が、後述の『メモ: リンゴの芽』参照。
第33話 (終)
前話の翌日のはず。まだ息が白いが、寒がってるシロは夜の屋外なのに半ズボン。
画像1. 鉄コン筋クリート 第2巻 (初版1994, これは第28版2002), p.185, 3コマ目
画像1. 鉄コン筋クリート 第2巻 (初版1994, これは第28版2002), p.185, 3コマ目

 通して読むと、キャラクターの服装が『やや厚着→薄着→やや厚着→厚着』の順に変化しているのが分かります。また、イタチが出現してから最終話までが約1週間です。

 ちなみに第3話ですが、映画版の資料集『鉄コン筋クリート ART BOOK クロside』のp157に、夏のシーンであることがコメントされていました。が、この記事は一応原作版の話なので、あくまで夏っぽいとしています。

メモ: 木村の女の出産予定日

 第12話の冒頭で、木村の女が「生理ないのよ」「わりと正確なのよ、私」と言う。正確なら、この時点では遅くとも妊娠2-3か月目までだろうか。

 出産予定日が4月の頭だと第25話で木村が言ってるので、例えば2017年4月3日に生まれるとしたら、280日前は2016年6月27日です。第12話時点で2-3か月目なら、8月22日~9月19日のどこかになります (※1か月は28日)。が、早くも遅くもなるだろうし、あくまで参考です。

メモ: リンゴの芽

 第30話でリンゴの芽が出るが、ここだけはあえて季節を無視した演出のように感じた。実際、イタチが出現する直前が、クロが一番厚着をしているように見える。冷たく無機質に変化していく街と、おかしくなっていくクロとが重なる表現なら、なおのこと真冬のシーンのはずだ。その真ん中でありえないはずの芽が出てきたとしたら、クロを救おうとするシロの力の象徴みたいに思えるのだが、どうだろうか。

 もしくは、クロが倒れてた5日間がめちゃくちゃ暖かかったかのどちらかだ……。

作中から推測できる年代

 次に、年代を特定する材料を拾っていきます。

第1話
沢田が藤村に『太陽にほえろ (1972年初回放映)』の話をしている。
第7話
じっちゃのタバコの銘柄がキャスターマイルド (1982年販売開始) である。
第10話
木村のタバコの銘柄がフロンティア (1988年販売開始) である [画像2]。
第8話
木村はおとめ座 (8/24~9/23生まれ) で、この時点で25歳である。
第12話
ネズミいわく、木村は『金星人』である。
第25話
ネズミいわく、4月の頭に生まれる木村の子供は『八白土星』『土星人』である。(※また、夏生まれの木村はこの時点で26歳である。)
画像2. 鉄コン筋クリート 第1巻 (初版1994, これは第26版2002), p.194, 1コマ目
画像2. 鉄コン筋クリート 第1巻 (初版1994, これは第26版2002), p.194, 1コマ目

 調べ始めると、作中でネズミがしきりに気にしている占いが手掛かりになりそうなことが分かりました。

 以下のサイト様によると、あの何星人というのは生まれ年で決まるそうです。

KUMAちゃんの九星気学.index

 金星人に該当するのは『六白金星』『七赤金星』の二つあるけど、土星人は『八白土星』のひとつしかないらしい。

 ということは、『1988年以降』かつ『26年前に生まれた木村が金星人』かつ『春に生まれる息子が土星人』となる年のいずれかが、鉄コン第25話の作中年代になります。が、数字を並べてみたら、『春に生まれる息子が土星人』のとき必ず『26年前に生まれた木村が金星人』となりました。なので実質『八白土星』の年です。

 とりあえず現実的なところで、2030年までで『八白土星』の年は以下の5つです。それでも9年に1回だから、かなり絞り込めたということになるが……。

  • 1992年
  • 2001年
  • 2010年
  • 2019年
  • 2028年

 しかし、これ以上を特定できるモノが作中に見つかりませんでした。というか、2030年より向こうの超未来の線が残ってる限り、なんとも言えません。

青い春から推測できる年代

 諦めずに、松本大洋氏の別の漫画青い春を引っ張り出します。

 青い春は鉄コンの少し前に雑誌掲載されていたという短編集ですが、その中に1991年掲載の鈴木さんというエピソードがあります。これが、鉄コンの木村とネズミ (鈴木) が出会った頃の話 [画像3] なのです。

画像3. 青い春 新装版 (初版1999, これは第26版2009), p.143, 3-5コマ目
画像3. 青い春 新装版 (初版1999, これは第26版2009), p.143, 3-5コマ目

 鈴木さんにおける木村は、死んだ魚のような目をした高校生で、素人なのにひとりでシンナーを売っていました。リボルバーのオサムたちがビビりまくっていた頃、木村は鈴木さんに渡された銃を冷や汗一つ垂らさず眺めていたわけで、大変恐ろしいです。そんな木村も実写映画版では同書夏でポン!の野球部のエースとキャラをくっつけられてたのだが、そのエースも原作では試合で敗けて手首を切ったドロドロの男なのに、けっこうサラッとした人物というかずいぶん爽やかな男になったものだ。

 それはいいです。

 鈴木さんでは木村の学年は明記されていないので、夏生まれの木村の当時の年齢は16~18歳のいずれかです。なので鈴木さんは鉄コン第25話の8~10年前のエピソードということになります。しかしこちらでもやはり、作中の年代を正確に特定できる要素はありませんでした。

 でも青い春は、読み込んでみると実は、鈴木さんともう一つを除く全てのエピソードが、1989~1993年のどこかの出来事だと推定 (一部は断定) できるのです。今度書きます。しかも、全7話中3話に同じ名称を持つ学校『北野高校』が登場するのですが、それが鈴木さんにも木村が通っている高校として出てきます。

 だから鈴木さんも、1989~1993年近辺のお話である可能性が極めて高い……と……思うのです。

 すみません。ここまで来て憶測でした。

 でもそれが正しかったら、もし鉄コンの8~10年前が1989~1993年にあたるのだとしたら、鉄コンの作中年代は1997~2003年のどこかです。そしてここで上記のリストを見ると、ちゃんと2001年が含まれています。

 つまり鉄コンは第25話時点で2001年 (第1話時点で2000年) だと推測できるのです。

メモ:木村と鈴木の生まれ年

 鉄コンが2000年の話であるとき、木村の生まれ年は1975年で『七赤金星』となる。金星人!

 さらに第25話で鈴木が自身のことを『一白水星』と言っているのをふまえて、同様に鈴木の生まれ年を絞ると、1936年または1945年のどちらか……くらいになる。2000年時点の年齢は、1936年生まれなら64歳、1945年生まれなら55歳。55だと若いかな?

21世紀の子供たち

 ところで鉄コンの単行本1巻は1994年に出てるけど、本当に作中で2000年のお話だとしたら、鉄コンの世界は連載当時から見ると近未来だったのかもしれません。レトロな街並みがフィーチャーされてる漫画だと思うので、ちょっと意外な気もしますね。

 依然として超未来の線は消えてないし、そもそも1988年以降の根拠がタバコの銘柄というのもしょっぱいですが、この記事的には鉄コンは2000年の話であるという意見で終わりです。

 筆者が見落としている・間違えてる重大事項がありましたら、教えてください。よろしくお願いいたします。

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かつてレレノイドは彼の瞳の中に希望を見ていたが、そのことをあっちこっちに言いふらしまくると、キリウ君は怒ってそれを燃えるゴミの日に出してしまった。